第百九十四話
「サイコミュ・リンク・システム起動確認」
「ツーのバイタル安定」
「4、139、211、322のバイタルも安定してまーす」
今、行われているのはサイコミュ・リンク・システムの起動実験だ。
随分と時間がかかったがようやくそれなりの形とすることができた。
ちなみに時間がかかった要因としてはプルツー専用に調整するようにしているのだが、その肝心のプルツーが忙しすぎたせい……つまり自業自得だな。もちろんプルツーではなく、管理者である私の、である。
「システムにエラーを確認……スミレさんが修正したそうです。具体的には一部、とーさまの試運転データのままだったみたいです。あのままだとプルツーねーさまが廃人になってたとかなんとか」
「なんとかで濁すところじゃないよ。301」
……多少のミスは天才の私でもあることだ。
「システム、問題ありません」
「では、リンクスタート」
「リンクスタートします」
私の合図でプルツーはサイコミュ・リンク・システム、略称PLS(Psycommu・Link・system)を本格起動させる。
そして、それと同時にプルツーの思念が4人のプルシリーズと繋がるのを感じる。
「全員にバイタルの乱れ?!……がありましたが戻り、安定しました」
「システム、特に問題なし」
「よし、プルツー、体調はどうだ」
『不思議な感覚です。今まで以上に皆が近くに感じる』
「もうしばらく慣らし運転してから意思疎通が可能か試みる。それまで無理はするな」
『わかりました』
受信する側である9、139、211、322にも声をかけるが特に問題はないようで一先ず安心、さすがにこんなことで廃人になったら多少は罪悪感を感じる……え?先程その危機があった?……気のせいだ。
それから10分ほど様子をみてみたが特にトラブルはなく、長い間起動しているため若干ストレスが溜まっている程度でしかない。
「よし、では本題に入ろう。プルツー、意思伝達開始しろ」
『了解しました』
返事とともにプルツーからそれぞれのプルシリーズに意思を伝えるのを感じ、受信側もそれを上手く受け取ることができている。
「うむ、成功のようだな」
プルシリーズはプルツーの意思通りにキュベレイを動かし、ファンネルを射出、今までは混雑するため自機の周辺に配置していたファンネルを、本来の用途である私が動かすMDを包囲ように展開し、見事なオールレンジ攻撃により、躱すことも適わず爆散判定を知らせる。
「使ってみた感想はどうだ」
『今までにないほど簡単により細かに指揮が執れます』
『ファンネルがぶつかったりフレンドリーファイアの心配しなくていいから便利』
『ただ、少しだけ意識が割かれて戦闘に集中しづらい』
『それは慣れの問題ではないかしら。これから訓練すれば慣れますよ』
ふむ、試作していた時からわかってはいてが、やはり集中しづらいという問題があるか。私ならば片手間で済むのだが……天才と凡人(ただし一般でいう凡人というカテゴリーではない)と一緒にするのは酷だな。
それにプルシリーズの1人が言っているようにまだ今回は初回起動だ。訓練すれば慣れるだろう……というよりも慣れさせる。
『『『『な、なんか背中がゾクッとしました』』』』
ふむ、そういえばこういう危機感も共有するのだろうか?意思伝達を優先的に考えていたので考えていなかったな。
……もしや誰かが戦死した場合、ダイレクトにそれが伝わってしまってショック死、という可能性も考えられるな。
しかし、実験するわけにもいかんし……どうしたものかな。