第百九十五話
いくらか未知数な部分があるとはいえ、一先ず完成した物を使わないのは惜しいので早急にプルツーの専用MSを仕上げた。
キュベレイ・エスティシス(ギリシャ語でセンス、もしくは知覚や第六感などを意味する現代のエステの語源)と名付けた。
この機体はキュベレイとデザインこそ変わらないが、サイズはクィン・マンサと同じであり、Iフィールドも搭載しているが、武装面はクィン・マンサ・ストラティゴス(アレン専用MD操作機)ほどではないにしてもPLSがサイズ的にもエネルギー消費量的にも大きいため、ファンネルすら搭載させず、自衛用に両腕部のメガ粒子砲、胸部にバルカン、触手4本という最小限の武装になっている。
もっとも前提として後衛にて指揮を執るMSである以上、この武装でも過剰な気がするが今の所プルツー以外に乗りこなせないのだから保険は掛けておくに越したことはない。
「それにしても物々しいものだな。おそらく単艦規模……いや、部隊規模でも世界最強は間違いないだろうな」
カミーユ隊のキュベレイ全て下ろし、キュベレイ・ストラティオティスへと替え、パノプリアを更に2機追加した。
これにより、カミーユ隊はキュベレイ・エスティシス1機、キュベレイ・ストラティオティス13機、パノプリア3機という明らかに戦争を行う戦力というものとなった。
「ジャミトフ、それは再編前から変わらんだろう」
「おっと一本取られたな」
「それに肝心なことを忘れているようだが、私の操るアッティスにカミーユ隊は勝てるとでも?」
「……そうだな。アレンには勝てないだろうな」
わかってくれたようで何よりだ。
しかし、さすがの私でも勝つことはできるだろうが、ファンネルを多く消費するのは間違いない。
それは若干面白くない。
やはり、クィン・マンサ・ストラティゴスとMDクィン・マンサを実現すべきだろうか。しかし、既に生産レーンは既に一杯か……いや、アッティスからコントロールすればいいのだからMDクィン・マンサのみでいいのだが……どちらにしても戦闘要員であるプルシリーズへのMSの配備が優先か。
私1人では長時間戦闘を行うことは不可能である以上、多少戦闘能力が落ちたとしてもプルシリーズの戦力化を優先なのだ。
「そういえば、例のジャミトフ信者達はどうなった」
「予定通り、交渉事が得意な者達は交易所に入った不死鳥の会を管理、監視を任せ、不得意な者には諜報員として動いてもらうことになった」
「それは僥倖」
普通なら後ろ盾となる不死鳥の会を新人に任せるのは問題があるだろうが、ここに限っていば特に問題はない。
そもそも他にはない完全なアドバンテージである不老不死もどきがある以上、不死鳥の会は強く出られないし、何より不正を行えばミソロギアと交易所ぐらいの距離ならば私が感じることができるので小さな不快は与えることがあるかもしれないが大事件に発展することはないだろう。
『本日のサイド1ニュースです。18時頃、1番地シャングリラにてジャンクギルド会長ゲモン・バジャック氏が集団暴行される事件が発生しました。犯人はジュドー・アーシタ、ビーチャ・オーレグ、モンド・アガケの3名でその場でジャンクギルドの構成員に取り押さえられ、逮捕されました。彼らの供述によりますと仲間の女子にゲモン・バジャック氏がセクハラを行ったことへの報復だと述べているようでゲモン・バジャック氏にも事情聴取が行われる事となっています』
『シャングリラに関しては年々経済状態が悪く、それによって治安悪化が一向に収まりません。抜本的解決には——』
……ほう、この少年達はいい素質を持っている。
これは是非検体として招き入れたい……が、少々気になることもあるがな。
どうもあの少年達はどうも思春期特有のニュータイプな気がしてならないのだ。
ニュータイプというのは年を取るにつれ、その力が衰えていくタイプが存在する。それが思春期頃のものが多い。
特に自由奔放で子供っぽい者に多く見られる傾向がある。そういう意味ではカミーユやアムロなどは子供ではあったが、自由奔放とは言えない。ある程度型に嵌った存在でありながらもニュータイプであったため大人になってもニュータイプであると確信できる。
プルシリーズは私が調整するので問題ないが、彼らは時間が経てばその能力は失われるだろう……まぁ一般的な生活を送る上では問題なんぞないだろうが。