第百九十八話
ちょっと興味が出たので繁殖機能を停止させるウィルスの研究を始めようとしたらジャミトフとファとフォウに止められた。
ワクチンも用意するから問題ないと言ったのだが……ウィルスは進化するのだから迂闊な物を作るなと言われた。
一理あるな、と思い一時保留とすることになった。残念だ。
などという戯れをしているとサイド1に向かっているはずのカミーユから電文が届いた。
「また奇襲を受けたか……気づいているから奇襲というのは言葉として間違っているか」
攻撃を仕掛けてきたのはアナハイムとエゥーゴとティターンズ……一々面倒だな。アナハイム一派(連邦という呼称はアナハイムが政府を飲み込みきれていないのでなし)でいいか……のようだ。
しかもまた新しいMSだったらしい。
概要はZガンダムの新型であるらしいが、どうも宇宙専用、しかも空間戦闘を前提とした可変MSなようで足のようなスラスターはあるが地表を踏むようにはできていないらしい。
まぁ宇宙という広大な領域を守護しようというなら特化機体の開発は必要不可欠だから驚きはない。というより今までこういう機体が出てこなかったことの方が不思議だ。
汎用機体はどこでも使えるというメリットはあるが、特化機体に劣るのは明白である。
ただし——
「他のプル達はともかく、プルツーが3機撃破したというのはどうなんだ?」
敵は16機となかなかの数を用意してきたが、PLSでMS、ファンネルの連携がほぼ完璧となったカミーユ隊の前に瞬殺されたらしいのだが、自衛武装程度しか搭載していない完全後衛機であるプルツーが4機撃破というのは明らかにコンセプトから外れている。(外れているだけであって元々標準MSの戦闘能力程度はあるが)
報告書の中にはプルツーが専用機に浮かれてしまってやってしまったらしい。日頃クールなプルツーもやはりプルシリーズであるということだな。
戦闘時間自体は火砲を交えてから4分程度で修了したらしい。今までより高度な連携を取っているのだからこんなものだろう。
「まだ以前鹵獲したMSの分析すら終わっていないのだがな」
なぜかというとアナハイムとの対立が決定的になったことで相手の技術を知るよりも私達独自の技術を発展させる方が効率がいいと集中していた結果である。
実際PLSの導入は多少の新技術でMS性能の向上させる以上の効果がある。情報の共有というのはそれだけ大事なことなのだ。
「しかし、アナハイムは随分とこの短期間で大盤振る舞いをしているな」
戦闘データを手に入れているかどうかはわからないが(パイロットは全て抹殺し、MSも全て持ち帰っているが無人機による撮影などされていたらさすがのニュータイプでもわからない)、2小隊以上のMSとパイロットを消耗してまで得られるものはあるのだろうか。
私達が同じことをやるならばパイロットはプルシリーズであるし、経済は統制しているし税金などというものはないのでやろうと思えばやってやれないことはないが、それだけ消耗するとなるとメリットよりデメリットの方が大きい。
ならば企業であるアナハイムは何の利益を狙って私達を襲ってきているのか……わからんな。1番有力なのは私達の戦力を過小評価していることだが、直接戦ったことがないエゥーゴはともかく、新生ティターンズから多少は情報を得ているだろうに。
と思っていたらまたシャアから通信が来た。
「今度はなんだ」
『君達は警備業をしているな?』
「ああ……まさか違法営業で取り締まろうと?」
やはり新生ティターンズと和平がなってから難癖をつけに来たか……いや、正論ではあるか。
『いや、そこはネオ・ジオンや他のサイドから届け出が出ているので問題はない』
ん?そんなことをした覚えはないが……知らない間にハマーンとジャミトフが手を回してくれたようだな。褒美として何かデザートでも渡すか。
「ならば問題ないはずだが」
『警備業に関しては問題ないが、君達には捕縛可能な犯罪者も殺害している容疑が掛かっている』
ほー、そう来るか。
「つまり、その殺害が正当であるという証明をしろと」
『端的に言えばそうだ』
簡単にまとめると、犯罪者(パイロット)の引き渡しと無抵抗な人間の殺害をしていないことを証明するために戦闘データを提出しろということだ。
ネオ・ジオン周辺中域以外は基本的に地球連邦の法が適応されるので道理は通してきていることになるが……どう考えても裏にはアナハイムがいるのは間違いない。
「それはこれまでのデータも渡せ、ということかな?」
『いや、正式に通達したこれからのことだ。これまでのことは多めに見る』
これまでのことは目を瞑るからこれからは文句言わずにデータを寄越せ、ということか。
犯罪者の引き渡しに関しては特に問題ないが戦闘データは問題だ。
サイコミュ兵器は画像解析では無意味なのは幸いだが、プルシリーズの戦闘データが漏れると何らかの対策が立てられる可能性がある。
「ちなみに拒めば?」
『できれば拒まんでもらえれば助かる』
明言を避けたか。
さて、どうしたものか。