第二百十話
ミソロギア内で革命が起こった。
革命と言ってもプルシリーズの反乱や新しい技術の発見などではない……いや、ある意味後者は当てはまるか。
革命……それは……なんとリィナ・アーシタと意外なことにエル・ビアンノが——
「料理ができただと?!」
「失礼ね!立派なレディに向かって!!」
「立派かどうかの議論は置いておくか、今時女だから料理をしろというのも時代錯誤だと言われて久しいからな」
その割りには未だに家事は女の仕事、という概念はなくならないがな。
私もどちらかというと女の仕事という認識だ。主に私自身が研究していたいからだが。
「その言い方だと私がレディかどうかの話は放置されてるんだけど?!」
「よく気づいたな」
「私を馬鹿にしてるわね?!」
「まあまあ、エルさん落ち着いて」
リィナが仲裁に割って入る。
しかし、この料理というものはミソロギア内では絶大な価値があるスキルで、既に彼女達はミソロギア内に自分の居場所を作ったに等しい。
何よりファとはレパートリーが違っていたり、味付けが違っていたりと新たな世界が開拓されたことにプルシリーズは歓喜している。
私も少しレーションの回数を減らしている……おかげでエンゲル係数が上昇傾向にあるので対策が必要だろう。
「私達は料理人として雇われたんじゃなかったと思うんだけど……」
「ならアレに加わるか?」
「……遠慮しとく」
アレとは、モニターに映し出されているジュドー達のことだ。
ジュドー達男組は私の健康診断(意味深)を行い、不具合を治し(意味ry)て今は元気よくプルシリーズと戯れているわけだ。
「アレを戯れといったらシャングリラでの生活なんておままごとよ」
一応リィナやエルを含めたジュドー達には志望を聞いた。
リィナやエルは保留、とりあえず当面は色々経験してから決めるというマージンを取ったがジュドー達の選択は——
「戦闘要員を、しかもパイロットを希望するならあれぐらいで音を上げては良くてプルシリーズの足枷悪くて背中から刺すナイフにしかならないからな」
女を盾にして生きてられっか!というジュドー達の心情は家事は女の仕事というものと同レベルの価値観ではあるが、気概だけは買って希望を叶えるべくプルシリーズと同等の訓練……はさすがに死んでしまうし、飽きて嫌気が差すだろうからプルシリーズ達の息抜きとして訓練をさせている。
ちなみに休憩ができたと下位ナンバーには好評で、上位ナンバーにはもっと訓練をしたいと不評である。
上位ナンバーは私が考えた訓練メニューを超える訓練を行っている場合があるからな……身体を壊しても私が治してしまうのがいけないのだろうか。
「お兄ちゃん頑張れ!」
「あ、そっち行ったら囲まれ——あぁ、言わんこっちゃない」
遊びの範疇から出ないとは言え、それでもプルシリーズは本気である。
負けることは死を意味する(特訓的な意味で)ので当然だ。
ついでに今モンド・アガケが触手でなぎ倒され、罰ゲームとして腕立て伏せをヒィヒィ言いながら行い、それを見てジュドー・アーシタ、ビーチャ・オーレグが笑っている……が、遠くない未来に同じ末路となることが確定しているための自棄笑いと言ったところか。
しかし、たまに寂しそうな表情をしているのは、やはりイーノ・アッバーブが居ないことが原因だろう。彼らの中で1番常識を持ち、それがゆえに他が馬鹿をしてツッコミを入れるというポジションであったようだからな。
ボケばかりでツッコミが不在となれば虚しいボケの積み重ねにしかならない。
一応女性陣がツッコミ属性ではあるが、残念ながら今は別々に行動しているため顕著に現れているようだ。
「応援もいいが手元が留守なのは頂けないぞ」
「……これ、医学の、外科の練習だったはずだよね?なんで刺繍なんてやらされているのよ
「多分縫合の練習だと思いますけど……今はホッチキスみたいなものを使うのが普通だと思うんですけど……」
「言う通り縫合の練習だ。あのような医者と言う名の素人が使う道具に頼ろうなんて甘い考えは許さん」
そもそも精度が甘い、せめてナノレベルで誤差にしなくては使えるものではない。まぁ私はフェムトあたりまで余裕だがな。
「……アレンさんの手の動きが綺麗過ぎて気持ち悪い」
「これぐらい目隠しした上に本を朗読しながら音楽を聴きながらでも熟せて当然だ」
「もうなんて言ったらいいかわかんないレベルね」
「深く考えると負けですよ」
いつ勝負していた?そもそも医学に関しての勝負なら負けるなんてことはありえない。