第二百十二話
私が操るMDはザクII改、リック・ドム、ジム改、ジムキャノンの編成である。
一応前衛がザクII改、ジム改、中衛にリック・ドム、後衛にジムキャノンとなっている。一応なのは結局操縦しているのが私であるため、戦況に応じて対応することになるからだ。
MDはその見た目とは違い、そのスペックはネモ程度には達しているのだが……私の反応速度を十全と発揮することはできない。
それに操縦の全てを私が操縦しているわけでもなく、強化人間型OSによるサポートにより超遠距離で複数体のMSを動かすことが可能となっている。
つまり、強化人間型OSのサポート部分はどうしても私よりも劣るのだが、遊びのような戦場とはいえ、経験を蓄積させているので将来的には完全な無人兵器となる日がくるかもしれない。
とはいえ、今は私が主導なわけだが——
「機体が重い」
毎度のことながらなかなか慣れない。
いくらそれなりの頻度で襲われていると言っても今となっては私の第3の腕とも言えるほどの動きをする触手を使う方が圧倒的に多いことからいつまで経っても不満が無くならないのだ。
だからといってMDを高性能化させるなど情報漏洩を考えればできるわけがなく、だからといって触手を使わないということはできない。
ストレスは身長の敵なんだがな。(成長期は過ぎていても頑なに成長する可能性を捨てきれていない)
「くっ、掠ったか」
メタスの後継機……面倒だからカラーがグリーンだからレタスと呼称する……は、どうやらメガ粒子砲……推定火力からハイメガか……と腕部に内蔵されているバルカン、そしておそらく何処かにビームサーベルという最小限の武装なようだ。
MSでこの火力は十分で、変形もあって機動力も優れているため一撃離脱による支援砲撃には優れているだろう。
もっともMS戦で優れているかどうかという別だ。どう考えてもこのレタスで統一して5機編成なんてするものではない。一体何を考えているんだ?アナハイムは?いくら資金が潤沢だろうと無駄に使うなどないと思うが。
「ちっ、今ので仕留めるつもりだったが……また新たな耐ビームコーティングか」
アナハイムは次々と新しい技術を開発している。
この前はカミーユ隊が鹵獲したMSは上半身と下半身を分けて、連邦の象徴とも言えるガンダムのコア・ブロック・システムの再現がされていた。
最新の核融合炉を2台搭載することでジェネレータ出力を用意したことで高火力を実現……したらしい。
問題はそれを発揮する前に専用機で浮かれていたプルツーによって戦闘不能に追いやられてしまったことだな。
まぁ無駄に被害が出るよりはいいことなのだがな。
ちなみに回収できたデータの中ではθという開発コードであることがわかっている。
「それにしても……この旧式の火力では後何発当てる必要があるのか」
機体スペックに対してMDの武装は貧弱なのだ。
そもそもMSもだが、武器、特にビーム・ライフルは相応に消耗するものである。その消耗品を現行機並にしてしまえばそれを維持するのに費用が掛かってしまうので武装自体はリサイクル用品のまま……というわけでもないが、現行機に比べるとどうしても火力不足は否めないものなのだ。
そもそもキュベレイシリーズは全て武装はジェネレータの関係で内蔵されているため、手軽に武装を渡せなかったというのもある。
「……そういえば、数で負けている戦いはあまり経験がないな」
今まではファンネルで圧倒的な数の暴力か超射程のメガ粒子砲による狙撃、自分の思いに応える触手という信頼できる自慢の兵器で戦ってきた。
MDでのこれまでの戦闘は相手がこちらを舐めているとしか思えない戦力だった。
しかし、今は敵の方が数、質(MSの)共に上回れている。
特に——
「あのビームコーティングは鬱陶しいな」
何度も命中させるがビームコーティングを剥がすには同じ箇所を狙う必要があるが、この鈍いMDと高機動な敵MSではさすがに先読みしても同じ箇所を狙うなどという芸当は無理だ。当てるだけなら簡単なのだがな。
ザクII改とジムキャノンはマシンガンを武装し、狙ってはいるのだが……さすがに弾速が遅く、数発命中させたところで致命傷にはならない。
やはり距離が離れるとタイムラグも酷いな。
「……増援が来るまで待つか」
無駄に神経を使って疲れる必要もないだろう。