誤字訂正
前の話でALICEという書いてしまいましたが、正しくは強化人間人格OSです。
第二百十三話
仕留める気を無くした私は強化人間人格OSにほとんどを任せる形でレタスの相手を片手まで熟しつつ、レタスの分析を行う。
「あの機動力と防御力では援軍が来たら逃げられる可能性が高いからな。今のうちに分析しておくに限る」
とは言ったものの、メタスとの違いはおそらくジェネレータとハイメガ粒子砲(正式名はキャノンだがアレンが知るはずもない)、あのしつこいビームコーティングぐらいのようだがな。
ビームコーティングに関しては戦闘後にいくらか入手することができるだろう……が、ああいうものは再現が難しい。MSの再現などは結果的に同じにすればいいだけだから比較的簡単なんだがな。むしろ元の性能を上回ってしかるべきだ。
ビームコーティングに関しては不死鳥の会に丸投げしておくか、せっかくできたコネなのだからわざわざ私自らやる必要はない。
「ハァ……せっかく科学に興味を持つプルシリーズが出てきているというのに軍拡に浪費せねばならないのだから本当に組織というのはろくでもないな」
遺伝子のせいかわからないがプルシリーズが科学に興味を抱く確率は極端に低い。
今までは分母が小さいからだと思っていたが既に800人に到達したというのに興味を惹く個体が10人にも満たないというのは遺伝子レベルなのかと疑うレベルだ。
一体なぜこんなにもプルシリーズが科学に興味を抱かないのか。(日頃からマッドが近くにいれば反面教師にしてしまうのも仕方ない。つまり自分のせいなのだが自覚は未だにない)
そうしてレタスの分析が終わり、パイロットのデータ取りまで終わり、なお時間が余ってガンダリウムγの塊を削ってレタス5体、MD4体の模型が完成し、戦闘シーンの一部のシーンを再現したところで——
「やはり逃げるか」
増援であるMD母艦が到着、そして到着したことを知ったレタス達は慌てた様子で逃げていった。
「ふむ、しかし……てっきり戦闘ではそれなりの動きをしていたし引き際の見極めもいいからそこそこ実戦経験があるのかと思ったが、あの撤退の手際の悪さ……よく訓練された新兵か?にしては戦闘中の動きは良かったが?」
一応探りを入れておくか、さすがにこの距離だと疲れるので戦闘中ですらあまり意識しないようにしている。まぁその程度でもどうにかなる相手だと見切ったから、だが。
さて、吐いてもらうとするか……厳密には吐かすに近いが、細かいことを気にしては科学者にはなれないのだ。
どれどれ…………なるほど、このレタス……メタス改は簡易型強化人間人格OSのテスト機で、このパイロットはこの機体専用パイロットとして訓練された者達らしい。
そして撤退の手際の悪さは戦闘全般をフォローする強化人間人格OSだが、撤退はその対象外だったようだ。
撤退こそ被害を抑えるために統率の取れた動きが必要になるというのに……彼らは知らないがおそらく、デチューンするに至って省略されたのだろう。研究、開発しかしていない人間は現場のことを知らないため、たまに起こる現象だ。どうせ逃げるだけなら誰でもできるだろうなどという浅はかな考えでこのような形になったに違いない。凡人らしい失敗である。
これがMDという低性能な敵だから助かったが、これが最新鋭機だと全て撃破されてしまっていただろう。
それでは人はともかく、戦闘データが手に入らないという失態を演じることになる。それでは時間の無駄だ。
「……ハァ、むしろ私の時間が無駄だった気がするな」
MDで戦闘を行った時は毎回このような虚無感に包まれる。今回は多少興味を惹いたが、結局は鹵獲することに失敗している。
「やはりここに研究設備を設置するか?だが、予算が……それにこの前新しく設備を導入したばかりだし……うーむ」
とりあえず、移動させたMDを元の位置に移動させるように指示を出し、MDコントロールルームから出た。