二百十七話
個人の強さというのは現代の戦争において軽視されていたが、MSの登場で見直され、それを体現したのがジャミトフが組織したティターンズでもある。
ティターンズの少数精鋭思想はMS無くしては語れない。そして究極の少数を体現するために生み出されたのがTRシリーズだ。
その思想は何処から来たのかと思っていたが、ジャミトフの思考から察するにどうやら星の屑作戦が切っ掛けだったようだ。
確かに星の屑作戦はデラーズ・フリート、つまりジオン残党によって起こされたものであり、その数は国軍(連邦やジオンなどの正規軍)から比べればかなり少数でソロモンで行われた観艦式を消滅させることに成功し、更にコロニー落としまで成功させ、しかも首謀者であるデラーズこそ戦死したが、多くのデラーズ・フリートはアクシズに合流することに成功している。
ジオン残党でこの成果であるならば地球連邦がそれを行えば、それを上回るものを用意できると考えても不思議ではない。
「となるとあのTR-6の原型はノイエ・ジールか?」
「少なからず影響があったのは間違いないな。最終的にはノイエ・ジールとGP02を合わせたようなMSを開発する予定であった」
なかなか物々しいMSだな。(クィン・マンサを作り出した男が何を言う)
しかし、観艦式の艦隊のほとんどを消し飛ばした核か……検討してはいたが、あの頃はアナハイム一派との対立前だったこともあって自重したが、対立が本格化してきたこともあるし念の為にいくつか用意しておくか。幸いGP02のアトミック・バズーカと核弾頭のデータは手元にあり、再現するのはそう難しくない。(ブラックボックス?そんなものはアレンの前では無意味だ)
ふむ……実体弾はビームに比べ弾速が遅いことが問題であり、核に関しては迎撃されてしまえば無力化されてしまうという欠点だがファンネル化させてしまえば問題ないか。どうせそれほどの数を用意するわけでもなく、単価コストが上がったところでそれほど大きく影響するものではない。
これが地球上であったなら維持コストが馬鹿にならないが、宇宙では環境変化が起こりづらいため劣化そのものが遅く、維持コストがほぼ掛からないこともあって製造するメリットはあってもデメリットはほとんどない……強いていえば万が一何らかの要因で爆発してしまった時は悲惨なことになるということぐらいか。もっともそれも私にかかれば死の危機であるため予知ができると思うがな。
「始まるぞ」
おっと、今はとりあえず2人の戦いを見るとしよう。見ていなかったと知られれば後が怖いからな。
「いつもまでもハマーンだけが特別扱いされているとは思うなよ」
「MS戦で複数人ならばともかく、1人で私に勝てるわけがない。いくらクィン・マンサに乗ったからといって、アレンが私のために作ってくれたMSなのだからな!」
2人の感情の高まりを表すようにシミュレータからオーラが立ち昇る。
これはニュータイプレベルが一定に達している者が感情を露わにしている時に起こる事象であり、他のプルシリーズでも規模の違いがあるが発生を確認されている。
今回はシミュレータだからこのようになっているがMSの搭乗していた場合はもれなく原作でのカミーユやハマーン、キャラ・スーンが放っていたオーラと同じく、MSが纏うことになる。
ちなみにアレンはこの現象についてあまり重要視していない。なぜならアレンは他のニュータイプでは戦闘時などの特殊環境でしか感じることがないそれらを常日頃からその現象を見ているからである。
アレンとしては多少オーラが多く見えるな。程度の感想でしかないのだ。
「いくぞ!」
「ここで勝てれば父様に褒めてもらえる!」
ただし、ここで勝てばまた姉妹から嫉妬を買うことになるのだが。