第二百二十五話
あまり深く考えずにハマーンの受け入れをしてしまったが、ハマーンがミソロギアに移住するというのはティターンズからジャミトフを引き取ったことより困難なのではないかと思考を巡らす。
ジャミトフを引き取った時は既にティターンズは敗北し、そして戦犯であったが、それでもジャミトフの影響力は強い……実際、今はあまり活用はしていないがその気になれば一報を入れるだけで連邦を騒がせることができるほどの影響力を保持していることを確認している。
当時のエゥーゴはこんな危険人物を生きたまま捕らえてしまったのは誤算だったらしく、処刑しようにも影響力があり過ぎて処刑するまで時間がかかる、最悪は無期懲役と言う名の無罪を勝ち取ること可能性があった。
だからこそ私達に引き渡すことも抵抗が少なかったのだ。終戦直後だったから私達の戦力に腰が引けていたのもあるだろうがな。
それに比べてハマーンはネオ・ジオンにとっては国単位で見た場合連邦のジャミトフなどとよりも影響力がある人物だ。ジオン公国で言えばギレン、もしくはドズルやキシリアに相当するのだから当然である。
そんな人物が国外に移り住むなどありえないだろう。しかもネオ・ジオン自体が私達を快く思っていない……もっと言えば敵対的なのだ。
つまり、ハマーンを受け入れればアナハイム一派とネオ・ジオン、世界のほとんどを敵に回すことになるということだな。
「楽しくない未来が視えるというのは良いことなのか悪いことなのか」
先に知れることは良いことで、不可避である事実がわかることは悪いことかな。
こうなるとジャミトフという札……使うべきかどうか、悩むところだ。
戦争回避のために再びエゥーゴとティターンズの分裂させる工作を行うという手段があるが……万が一これが露見してしまった場合、相手に大義名分を与えてしまう上に、関係改善が進む可能性もあってあまり得策ではないと思っている。
そしてジャミトフを使わない場合、私達が行える外交手段は砲艦外交しか残っていないという悲しい現実……いっそネオ・ジオンを落としてやろうか。
「やるなら協力するわよ?」
「冗談だ。正直、手に入れても戦争以上に面倒事になるのが目に見えている」
よく有能な敵よりも無能な味方の方が強敵だというが、それはまさに真実だ。
ハマーンを旗頭としてある程度治めることができる可能性は高いとは思うが、戦力が増えると同時に内に敵を抱えることになる方が問題だ。
戦闘面での強さは無類の強さ誇る私達ではあるが四六時中隣人を疑って過ごすというのは共鳴によってあるッ未然に防ぐことがオールドタイプよりも容易で、訓練の一環として使えるとはいえ、過剰なストレスは精神異常を起こす原因となり。現場に支障をきたす可能性が高い……そして何よりさすがに命を賭けてまで研究を優先するマッドサイエンティストではない。決して無い……本当だぞ?
大体そんなことになれば私がまた忙しくなるではないか。
「ふむ、以前考えていた、地球圏からの離脱も視野に入れておくべきか」
「またアクシズに逆戻り?……あ、でもとっても狭かったし物もなかったけど、もっと自由楽しかったわね。あの頃の方がいいかも?それにミソロギアで行くのよね?それならもっと広いし、事前に準備しておけば物にも困らない……あれ?思った以上にいいかも?」
「そうだな。唯一問題となるのは研究に必要な物資が手に入らないことと全て自作しないといけないことか」
「アレンの研究ってクローンとニュータイプが主なんでしょ?辺境に行けばMSの開発なんてしなくて済むんだからプラスになるんじゃないの?」
盲点だった。
最近はMSの開発ばかりしていたからすっかり忘れていたがMS開発は研究資金を稼ぐために始またものであり、ここのところは自己防衛のために行っていたんであって私がやりたい研究はそれではない。
辺境に行けば敵に襲われることはほぼなくなるはずで、だからMS開発は最低限にすることができる。
「むしろ悪い点を探す方が難しいか」
本来のデメリットであるスペースの狭さや物資不足などどうとでもできる内容のものでしか無い……ああ、でも不老に溺れきっている不死鳥の会からはクレームが来そうだな。定期的に地球圏に来る必要はあるかもしれない……もっとも物資の件もあるから定期的に帰ってこなくてはならないだろうがな。
「じゃあ決定ね」
こうして私達は地球圏からの高跳びすることを決定した。