第二百二十八話
ハマーンがMDを動かすというのでせっかくなので私直々にデータ取りをする。
MDの動作データは今の所カミーユとフォウ、そして未だに治療中であるがMDがおもちゃにしか思えないらしく、ロザミアの遊び半分のもの、そしてプルシリーズのみとサンプルデータが少ない。
機体が機体なのであまりいいデータは取れないだろうが、それでも貴重なデータとなるだろう。
ちなみにジュドー達のデータはまだない。というよりもMSを操縦させる域まで達していない。プルシリーズのように生まれてすぐに教育を施しているならともかく、外部の教育を(不良とはいえ)受けているジュドー達にはまだMSの操縦は早すぎる。万が一事故が起これば処理が面倒だからな。
「しかし……鈍っていてあの動き、やはりパイロットとしての才能は図抜けているな」
ザクIIですら重たくて苛立つというのに更に運動性、機動性が低いザクIなど私にはとてもではないが操縦する気になれない。
それでもハマーンはそれなり以上にザクIを操っている。
そして、それを眺めているプルツーから強い嫉妬と対抗心が流てくる。それも仕方ないことだろう。クィン・マンサでの戦いはハマーンの土俵であったが、MDは今回が初めてにもかかわらずあの操縦はプルツーに匹敵する……いや、それ以上な部分も魅せているのだ。本人達は認めないだろうがライバルと言っていい関係であるから対抗心をもって当然である。
「……これは少し鍛えるべきかもしれないな」
検体としてはもちろんだが、戦力としてのことも考慮してのことだ。
私達の仮想敵であるアナハイム一派は相手にシャア、アムロが確定で、最悪を予想するならばシロッコも敵に回ることになる。
シロッコのデータは少ないが、少なくとも若いナンバーのプルシリーズで相手をするとなると3、4人は必要だという予想が出来ている。
そしてシャアとアムロはMSスペックの差を考慮しなければ上位ナンバーではなく、プルツーやプルなどの最上位ナンバーで良くて5分(時間ではなく勝率です。念の為)、悪ければ3分(時間ではなく以下略)といったところだ。
戦いを想定するとなるとMSスペックの差に期待するのは愚の骨頂。何よりそもそもの数が違うのだから多少のMSスペックの差など覆されると思っておいてしかるべきだ。
「ハマーンを成長させれば1対1……いや、MSスペック差次第では1対2も難しくないだろう」
それに現役のアムロはともかく、政治家として活動中のシャアはひょっとすると本格的な抗争段階に入った頃にはパイロットを引退……というかもう既に引退していることになっているのだが、どうも生死の境界が好きな変態だからな。いつ何時現役復帰しても驚かない。いい年なんだから自重するべきだと思うぞ。(それをもし本人に言ったならアレンも子供じゃないんだから暴走(研究)も自重すべきだと言い返されたことだろう)
「地球圏を離脱する時に戦わないとも限らないから念には念を入れるべきだろう」
もし私が凡愚な奴らだったなら、こんな天才(天災)を見えない場所に野放しにしてはいつ世界征服を目論むか心配になるというものだ。
もっとも凡愚ゆえの愚かな考えだがな。世界征服など面倒なだけだということに思い至らん可能性も考慮せねばならないとは。(本人達が聞いたら、むしろ世界壊滅の危機にならないか心配だ!と叫ぶことだろう)
「そうなるとハマーンの時間を作り出す必要があるな」
鈍っているのはハマーンが宰相として多忙な日々を送っていることとクィン・マンサが軍機であるためシミュレーターが用意できないことが主な要因だろう。
シミュレーターはどうにか用意することができる。もう1隻、船を用意して派遣するればいい。
だが、ハマーンの時間を作り出すのは難しいのは考えるまでもなく想像がつく。
「……とりあえず、日頃のスケジュールを聞き取り、なんとか改善できないか検討してみるか……時間を生み出すといえば精神と時の……」