第二百三十六話
アナハイム研究施設の小惑星の所有申請は無事通り、所有が許されることとなった。
ちなみにこの小惑星の所有者はサイド4の富豪だったようだが、一年戦争の際にジオンが接収、そして終戦後は連邦所有となってはいたが、そのような小惑星が複数あって管理が行き届かず(主に怠慢)に放置していたのをアナハイムが無断利用していたのを私達が海賊として討伐し、所有するという流れだ。
アナハイムも弱みがあり、強く出れなかったから思った以上にスムーズだった。多少の金銭を支払ったが小惑星の規模からすると安いものだ。
それとこの一件以来、アナハイムの所有する小惑星が膨大な数になった。
どうやら自分達が隠している施設を襲われるとは思っておらず、過剰反応を示したのだろうな。
いや、普通ならこれほど過剰反応を示すこともないか。おそらく、私達が襲った小惑星が機密レベルが高い場所だったためだろう。
人体実験をしている施設の機密レベルが低い訳がないからな。そこを襲われたとなれば肝が冷えたことだろう。
「……まぁまだ隠している施設があることはわかっているんだがな」
推測すること自体は難しいことではない。
人がいれば必ず物資が必要だ。宇宙では特に、だ。
そしてアナハイムの船の往来を調べ、到着予定日時の誤差がある船を割り出す。当然それらから辿られることを相手も考慮していないわけがない……が、それでもある程度方角が見えてくる。
後は簡単、私が集中して探せば見つかる。だが、これはまだ行っていない。
私が集中して探せばオールドタイプでも感じ取ってしまうほどの影響を与えてしまう。そうなっては襲撃がしづらくなるので必要な時のみに行うことにしている。
今回手に入れた小惑星は研究設備をミソロギアに回収した後、手狭になってきた交易所兼採掘場として活用するつもりだ。
私達が旅立つ4年後には不死鳥の会に譲渡することも決定している。
「……そういえば随分とティターンズ……いや、シロッコは頑張っているようだな」
やつはニュータイプを集めて部隊を設立したようだ。
以前も似たような部隊があったらしいがサラとマウアーとかいう2人以外は戦乱中に全滅しているためほぼ新設だ。
「しかし、シロッコは随分と現実を見るようになったな」
以前は時の流れという絵を見、それに着色して、自分が思う絵を描きたい……と思うほど、正常な人間ではなく、時の流れというキャンパスに画家が描いている横から面白半分で一筆入れて画家を怒らせてその反応を楽しむ愉快犯、もしくは狂人のような存在であったがいつの頃からかその狂気も落ち着いてしまっている。
せっかく同志を得たかと思ったんだがな。
0092年ももう終わりに差し掛かった頃、戦艦が完成した。
ネオ・ジオンに派遣する以上、ネオ・ジオンに属する戦艦をモデルに使った方がいいだろうとエンドラ級軽巡洋艦(ムサイ級がコムサイ込みで全長234mであるのに対し410mという同じ括りにしていいのか疑問だが)を改造して作り出した。
キュベレイ・ストラティオティスを4機しか搭載できない(サイズ的にこれ以上は無理)し、武装も変更はない。
その代わりに装甲は全てガンダリウムα、β、γ(過去に開発した他のより脆い代わりに軽量なもの)の複合装甲を施し、アーガマの居住区を参考に遠心力による重力区画を用意し、サイコミュとPLS(サイコミュリンクシステム)を搭載することで操船必要人数を通常航行で15人、戦闘時に30人と人数を削減することに成功し、更に機動性、加速性を大幅に向上させた。
ちなみにこの戦艦の撤退速度は私が強化を施していない人間では良くてブラックアウト、悪ければ首の骨が折れて死ぬこととなるほどである。更にいうと私は対Gスーツを着た上でも乗りたくないものである。