第二百三十七話
今頃になって新しいMS、ジェガンがお披露目される(連邦に配備される)ことになったようだ。
開発段階で鹵獲されたものをそのまま正規採用とは草が生える。
そもそもジェガンのデータは既にネオ・ジオンに売りつけている。つまり、軍機も何もないMSと化したのだ。
それを新型機として配備するのだから私からすれば嘲笑ものだ。
まぁ、元々量産機というのは鹵獲されることも前提で開発しているもので、特に連邦は数で押し切るドクトリンであるのだから問題ないと判断したのだろうが……兵士の士気は大いに下がることだろう。まだ秘匿しているらしいが伝わるのにはそれほど時間は必要ないだろう。
これだから現場を知らない商人は困る。
「もっともさすがに特殊な機体の情報までは把握できていないが……」
どうも、私の情報網(共鳴による情報抜き取り)に気づいたのか、それとも念入りに隠匿すべきだと思ったのかはわからないが、そういう機体は開発自体を地球で行っているようなのだ。
さすがの私もこの距離から地球まで共鳴できない……わけではない。
ただ、地球にはあまりにも多くの人間と生物が存在しているため上手く読み取ることができないのだ。
それなりの大きな意思や意思を統一させたならば汲み取ることも可能なんだがな。
「……もしかするとニュータイプが宇宙で覚醒するのはトラウマだけでなく、コロニーという限りある生命を強く感じ取るために進化したのかもしれんな。しかし立証するのはなかなか骨が折れそうな内容だな」
私達はこれからも長い間、宇宙で生活することになるためそれほどの生命を確保するのはまず無理だ。
ふむ、1度地球に行ってみるべきか?しかし安全面がな。
アナハイムは平気で暗殺などする。実際、この2年の間で死亡した野党議員の何人かはアナハイムの手によるものだ。
全く面倒な組織だ。
そして連邦の新型機の発表に合わせるかのようにネオ・ジオンでも新型機の発表がされた。
それはギラ・ドーガという機体なのだが……私が以前設計したガッライを改良しただけにしか見えないのだが?
あの機体はオールドタイプが操れる限界値に近い設計をしていた。それを上回るということは私以上の天才が必要になるだろう。
それにネオ・ジオンは人口の問題で数ではなく、質を重視しているため、必要以上に量産機に費用を使いたくないというのもある。
それを立証するように大型MAと大型MSの開発を同時に行っているようだ。
私が言うのもなんだがジオンは大型が好きだな。サイコミュを搭載しないなら大型の必要なんて無いはずだが……それともサイコミュを搭載させるのだろうか?
『お久しぶりです。アレン博士』
「ああ、こうして連絡が来るとは思っていなかった」
『——ッ!』
「ふむ、今は地球にいるようだな」
『そういう確認方法はどうかと思いますよ?』
ナナイはニュータイプであるため私が知覚できる範囲であれば地球でも探ることができる。もちろん地球にもニュータイプは結構いるので個人として認識している場合に限るが。
ちなみに詳しく現在いるのは……カナダのバンクーバーあたりのようだ。
「これで連絡を取るよりは常識的だろう?」
『十分非常識だと思います……相変わらず変わりませんね』
「それほど褒められても何も出さないぞ」
『褒めてません』
「もちろん知っている。」