第二百三十八話
『私は今、エゥーゴで研究をしています』
「……それは漏らしていい情報なのか?」
『はい。これは許可を取っていますから問題ありません』
ふむ、つまり、それ以上は軍機に抵触ということ、そして挨拶もそこそこにいきなりこういう話を振ってきたということは……話すことができないが話したい内容が、少しでも伝えたいことがあるということだろう。にも関わらずその表情は私に伝わるかどうか不安が混じっている。
……私に伝えたいということは私、私達の技術より進んだ技術、発明……新たな発見かブレイクスルーが発生したということか。
そしてこの通信は監視されているのは間違いないな。まぁ研究施設に所属している者にとって普通のことだから今更ではあるが。
それにしても……ニュータイプ自体の研究で私が劣ることはまずありえない。私以上にニュータイプの研究を進めることができる者がいるとすれば私と同等以上のニュータイプで私以上の頭脳がなければ不可能だ。そんな奇跡がそう簡単に起こるなんてことはまずありえない。というか、気づかないわけがない。
となると考えられるのはサイコミュに関してだと考えられる。
そして、性能自体は私達が遅れることも将来はなくはないだろうが、まだありえないだろう。
新機能の発見か小型化あたりか?
「それはおめでとう。何か就職祝いを贈ろう……そうだ。服がいいだろう。しかし私のファッションセンスは壊滅的だという判定を貰っているからな。具体的にどんなものがいいか教えてもらえると助かる」
遠回しに私の推理を伝えてみたが……どうやら上手く伝わったようで頷いて答えが返ってきた。
『ではパーティー用のドレスをお願いします。最近パーティーによく出席するので……でも派手なのはあまり好みではないのでオーソドックスなもので、サイズはスミレさんが知っていると思います。それより肌触りのいい軽い繊維がいいですね』
派手ではなくオーソドックス、つまり機能自体は変わりないということか、しかしサイズはスミレが知っている?それではこちらに伝えてくる意味がない……いや、その後の繊維の指定が本命か?しかし繊維とはどういうことだ。布と言わずに繊維……まさか繊維に匹敵するほど小さいとでもいうのか?
「そうか、それほど繊維に拘りがあるとは知らなかったな」
『ええ、私も最近まではあまり気になりませんでしたが同じ服でも繊維が違えば重さが違うので肩のこりだけ見ても大きく違います』
私の話しに訂正はなかった。つまり推測が当たっているということ……つまり、それは……信じられないことにサイコミュを装飾品などよりも小さい繊維と言えるほどまで小型化に成功したということだ。
念を押すように言っていることからもほぼ間違いないだろう。
しかし……こんな機密情報を伝えてくれるとは、ありがたい限りだ。
「わかった。ドレスだけというのはなんだから合うネックレスとブレスレットも一緒に贈ろう。楽しみに待っていてくれ」
『ありがとうございます』
しかし……サイコミュをそこまで小型化するなど、想像もつかんな。
研究所をハッキングするか襲撃してでも入手すべきか……しかし大気圏内はさすがに厳しいな