第二百三十九話
「それでスミレ、どう思う」
ナナイとの通信は録画していたのでスミレと共に観て、感想を求める。
「そう、ですね。信じられませんがどうやらサイコミュの小型化に成功したのは間違いないようです。これって多分ナナイさんですよね」
「まず間違いないだろうな」
アナハイムにしろティターンズにしろ連邦にしろ、ニュータイプ研究の土台はジオンのフラナガン機関のものを使用しているのはジャミトフに確認済みだ。
そして、フラナガン機関を土台としているのならブレイクスルーがあったとしてもこれほど早く実現できるはずはない。
そこで出てくるのがナナイ・ミゲルだ。
以前ナナイと会った時に開発内容をチラッと見せてもらったが、彼女はフラナガンで行っていた解析や分析データを基にはしていたが、全く違うアプローチをしていた。
おそらく、それがブレイクスルーとなったのだろうが——
「問題はそれによって生み出されるMSの性能……ですね」
「ああ、量産機程度ならプルシリーズが200もいれば5倍の差があっても負けることはないが、エース級が更に力をつけるとなると問題だ」
サイコミュはその性質上、ニュータイプにしか動かすことができない。オールドタイプが扱える準サイコミュなどというものがあるが、あれは所詮補助の役割しか行えない劣化品、良く言えば下位互換でしかない。
そうなるとニュータイプがパイロットとして選ばれることとなるわけだが——
「シャアはニュータイプとしてイマイチだが、あの白い悪魔は厄介だな」
「幸いなのはカミーユくんとフォウさんがこちらにいることですね」
「確かに」
カミーユはニュータイプの素質だけで言えば白い悪魔を上回り、フォウは両者ほどではないにしても強化人間の中では間違いなく上位だろう。
しかも白い悪魔はその年齢で技術や経験はともかく、身体能力のピークは過ぎているが若いカミーユ達はピーク状態に近い。更に言えばニュータイプの訓練をしているわけでもないので加齢によるニュータイプとしては減退傾向にあるはずだが……だからと言って油断していい相手ではない。
それに——
「サイコミュによるミノフスキー粒子への干渉の件もある」
「ああ、その点もありましたね。現行のサイコミュでは生死を掛けるほどの感情かアレンさんぐらいでないと起こせませんけど、新しい形のサイコミュもそうだとは限りませんよね」
あの干渉はビーム兵器はもちろん、ニュータイプの素質と威力次第ではあるが実弾兵器すらも防ぐバリアのようなものを展開することができることがわかっている。
もしこれが自分の意思で使えるレベルに達し、そしてそれが白い悪魔であったならかなりの脅威である。
「私達も負けていられませんね!未来予測システムの最終調整に入ります!」
「ああ、私も新しいサイコミュを考えついたのでそれを試作してみようと思う」
「え、興味が惹かれるんですけど?!」
まぁ、元々サイコミュ開発のほとんどを、趣味としているスミレに任せて、私は別の研究をしていたから気になるのは当然と言えば当然だろう。
「もっともナナイから受けたアイディアだから褒められたものではないがな」
そう言ってスミレに設計図を見せる。
「これは……装甲そのものにサイコミュに?」
「ナナイがドレスを例に出した時に思いついたものだ。上位ナンバーはそもそも被弾すること自体がほぼなく、ビーム兵器ならIフィールドで無効化するかビームコーティングで軽減するかのどちらかになり、実弾は被弾することがそれこそ少ない。ならば装甲自体はそれほど重要視する必要はないだろうと考え、装甲をサイコミュにできないかと考えたのだ」
「なるほど……まだ色々検証しなくてはいけないことがありますけど、面白そうですね!!」