第二百四十話
早速試作機の製造に取り掛かろうとした時、天啓が舞い降りた。
サイコミュの新型……いや、どちらかというと亜種というべきか……よりも気になってしまい後回しにすることとした。
「私としたことがうっかりしていたな」
改めて説明する。
サイコミュには、高レベルのニュータイプが使えばミノフスキー粒子に干渉し、バリアのようなものを発生させる事ができる。
このバリアはサイコミュとニュータイプレベルしだいではビーム兵器から実弾まで防ぐこと何度か説明したが……これをどうやって防いでいるかというと、多数の要因によるものなのだが簡単に話せば干渉して密度を高め、Iフィールドを形成することでビーム兵器を、粒子を高速で動かすことで実弾まで弾いてしまうのだ。
……ここで私はあることに気づいたのだ。
皆は気づいたか?
ヒントにもう1度言うぞ?
ミノフスキー粒子の密度を高め、高速で動かす、だ。
気づいたか?
サイコミュとニュータイプで、拡散しているミノフスキー粒子を密度を高めたり、高速で動かす……つまり——
「まさか推進剤が不要になるとは思いませんでしたね」
スミレが正解を言う。
そう、ミノフスキー粒子に干渉して動かすことができるということは簡単に言えば物に当てることも可能ということなのだ。であるならMSそのものにミノフスキー粒子をぶつけることで推進を得ることができないか?というのが私の思いついたことである。
必要なのは電気とパイロットの精神力だけであり、ミノフスキー粒子は本来なら時間と共に拡散してしまうが、崩壊してしまうわけではないので使い回すことが可能なのだ。
ちなみにこれは分かりやすく説明しているだけで本当はもっと複雑だ。
「もっともこの発光現象を起こすのに必要なサイコミュスペックだと船でないと搭載不可能、しかも得られる推進力では加速性が悪いが……」
とてもではないが戦闘が行えるものではない上にサイコミュスペックを満たしたとしても今の所、平時では私しか発光現象を起こせていない。感情が高ぶった状態ならハマーンやプルツーも可能だろうか?……割と欠陥品である。
「それでも地球圏を離脱するなら大きな手助けになりますよ!」
そのとおりだな。
使い回しが利く推進剤というのは宇宙ではありがたいものだ。本来の推進剤は宇宙に拡散して減ってしまうものだ。
実のところ、一年戦争時にジオンが物資の中で1番苦心したものでもあるからな。
MSの運用には戦艦や戦闘機を運用するよりも遥かに推進剤が必要だ。なにせ、戦艦ほどのスペースもなく、戦闘機のようにバーニアを一点集中させて効率が良いわけでもない。宇宙用のザクに足がある要因の1つであるAMBAC(手足だけで旋回する方法のこと)は元々は旋回するために必要な推進剤を減らすという狙いもあったと聞く。
これから辺境で自給自足を行うとなれば、低推進力ではあるが推進剤の問題が解決したのは確かに大きいことだろう。
サイコミュの規模を大きく、そしてそれを動かす電力とミノフスキー粒子が一定の量あればミソロギアすらも動かすことが可能なのだ。
ちなみになぜミノフスキー粒子に干渉できて、ミノフスキー粒子をどうやって動かしているのかは私もわからない。
そもそもサイコミュとミノフスキー粒子に因果関係はないのだが?