第二百四十八話
「さて、続いての新技術を発表しようと思う」
「またか」
「最近、特に多いな」
ジャミトフとカミーユが言う通り、最近は開発が順調だ。
というのもナナイから新しいサイコミュの存在を知らされたということもあるが、何よりやはり軍拡が4年でいいという目安ができたことが大きく関わっている。
際限のない防備に労力(特に私の)が割かれ、満足に研究開発を行うことができなかった。
キュベレイからキュベレイ・ストラティオティスへの移行は私でも大変なのだ。
「今回の新技術は……これだ」
「……普通のキュベレイ・ストラティオティスではないか」
「中身が違うのか?」
「アンダーサイコミュを搭載してはいるし運動性と機動性を向上させてはいるがな」
「それは基本スペックの向上であって新技術ではないな……いや、キュベレイ・ストラティオティスの機動性と運動性をあれ以上上げた?それは俺もプル達、プルツーでも難しくないか?これ以上は上げても使いこなせないと聞いたんだが」
「そう、そこで新技術、サイコクッションの出番だ」
「クッション……ネーミングセンスが……」
「それよりサイコクッションということは……対G技術か?」
カミーユは同じ開発者だけあって察しが良くて助かる。
「このサイコクッションはミノフスキー粒子をコントロールすることでコクピットに掛かるGをほぼ0にする技術だ」
「「0?!」」
ただし、察する人は察することができると思うが——
「それは凄い発明……ん?サイコミュによるミノフスキー粒子の操作は今の所アレンしかできないって言ってなかったか?」
「その通りだ」
そう、このサイコクッションを行うことができるのは発光現象を任意に起こすことができることが前提ということになる。
つまり——
「今の所、私専用の技術ということだな。まさか起動が不安定な者に使わせるわけにはいかないからな」
「アレン専用MS……しかも、唯一の弱点だった体への負担を無くしたということは……恐ろしいな」
「私としてはアレンが前線に出るのは反対だ。アレンに万が一があっては……戦死でなくても負傷であったとしてもプル達にどのような影響が出るかわからん。リスクとメリットが釣り合わん」
「確かに、アレンの強さはアッティスでも十分だからな」
やはりそういう結論になるか。
「ついでにいうとサイコクッションを起動中は察知能力の低下、操るファンネルの数とコントロール精度が低下する」
「いいところが少なすぎないか?!」
「私の好奇心は誰にも止められない……ちなみにアッティスには艦橋のみ搭載する予定だ。戦闘中はともかく、通常時の航行速度が大幅に向上するはずだ」
「なるほど……でも、それならわざわざMSに搭載する必要が無いだろ」
「いや、これは訓練用だ」
「訓練用?だが、アレンが前線に出るとなると負け戦がほぼ確定しているだろう?」
「誰が私の訓練だと言った」
その言葉で2人は察したようで、ジャミトフは納得したように頷き、カミーユは顔が真っ青になっている。
「少しでも対戦相手は多い方がいいだろう?カミーユ艦長?」
「……俺は艦長だから——」
「ん?」
「……専用機もまだ完成——」
「んんん??」
「……ご協力感謝する」
素直でよろしい。
ちなみに、訓練相手が多い方がいいという理由はもちろんあるが、プルシリーズの中には私がMSを操縦しないことで侮っている個体も存在しているため、その対抗策として開発したということもある。
正直、ジャミトフやカミーユが言ったように私が前線に立つというのはリスクに見合っていないというのは上位ナンバーのプルシリーズなら理解できるだろうが、若ければ若いほど前線で戦っている自分が凄いと思っている。
もちろん間違ってはいないし、否定もしないが、現在のミソロギアの社会構図的に私が舐められたままでいるのは不味い。下手をすれば内部分裂の危機だ。
そこでシミュレータではなく、模擬戦で戦えたならそのような口も聞けなくなるだろうという狙いである。
まぁもう少し経験を積み重ねれば精神も成長し、そういったことが理解できる母数が増えるだろう。今は軍拡の関係で若いプルシリーズの方が多いから起こっている問題だろうからな。