第二百五十一話
「若いナンバーのプルシリーズを良くフォローできているな。さすが上位ナンバーだ」
時には動きが拙い若いナンバーをカバーし、ちまちまと中遠距離から牽制しているかと思えば、隙あらば自ら斬り込んでくる。
これが上位ナンバー1人だったなら3人の若いナンバー(足手まとい)で釣って仕留めるのだが、2人ではそれも難しい。
そして何より——
「ファンネルが鬱陶しいな!」
80基のファンネルから放たれるビームを避けるというのは私でもなかなかに骨が折れる。
これも上位ナンバーが狙って行った編成なのだろう。
プルシリーズと一括りに言っても才能にはばらつきがある。
そのばらつきというのはニュータイプ能力、身体能力やMSの射撃能力、格闘能力、回避能力など様々だ。
そしてファンネルを20基、ストラティオティスに搭載されているファンネル全基を同時に操ることができる、特に戦闘に通用するほどの技術を持つプルシリーズは全体で見れば限られている。その限られた中で4人共が20基のファンネルを操ることができるというのはない偶然ではないが、この場合は狙って構成していると考えるべきだろう。
「一気に方を付けられない以上、じっくり行くしかないか……」
基本は回避、隙あらばファンネルを落として少しずつ詰めていく方針にする。
さすがに共鳴禁止で回避能力が下がっているとは言ってもこれぐらいで落とされるほど私は軟ではなく、隙を突いてファンネルを落とすことぐらいはできる。
ちなみにニュータイプの回避能力の高さは鋭い洞察能力と共鳴によって相手の行動を先読みする能力の2種類ある。つまり今の私の回避能力は通常時の半分以下ということだ。
「ただ、問題があるな」
通常の戦闘であれば欠片も問題にならないが、さすがに80基のファンネルとストラティオティス4機の攻撃を躱すとなれば当然それ相応に小刻みに機体を動かすことになり、そして……推進剤がみるみるうちに消費していくのだ。
ミノフスキー推進はまだMSに搭載できるサイズでは搭載できない上にアレはそれなりに集中していないと使いづらいので戦闘には不向きだ。となると通常通り推進剤を使うことになるのだが……これだけ回避行動を取らされていれば当然推進剤を多く消耗する。
(ちなみにアレンが戦っているところを初めて見るジュドー達はドン引きしていたりする)
「これで13基目——」
そろそろ動くか?しかし、もう少し数を減らした方が……これはもう1度学び直すべきだろうか。
正直、私自身の技量は高いと確信しているし、戦い方、戦術も一通り修めている……しかし、専門に学んでいるプルシリーズに劣っている可能性がある。
何よりMSの戦闘経験は私の方が少ない。
シミュレータでは本気でこそないもののファンネルと共鳴は使っていたから圧倒できたが、さすがに現状では厳しい。
「22基目……行くか」
スラスターを吹かせて最大加速——これでもGを感じないとは我ながらいいものを作った。これは良いものだ——させる。
やはり上位ナンバーも読んでいたか、すかさず後退して逃げに徹する……いや、読んでいたというより私が取れる選択肢が少なすぎるだけか。
しかし、若いナンバーの反応が悪い……しかもファンネルの動きも鈍くなっている。
「なるほど、疲労か」
ファンネルの操作は集中力が必要らしい(私は20基程度だと意識する必要もない)ので長時間の戦闘には不向きだ。
そして攻撃する相手が私ということは操作のクオリティを下げるわけにもいかず、全力で操作していたのだろう。
「では、ご苦労だったな」
若いナンバーのストラティオティスに近づき、反撃しようと動きが——
「私と同じ舞台に立って勝とうと思うならもっと励むがいい」
両手に持つビームサーベルで2機を真っ二つに斬り裂く。(もちろん模擬戦なので爆発などしない)
そして程なく上位ナンバーも仕留めることに成功する。
4機で私を抑え込めていたが、2機が撃破されてしまえば均衡が保てるわけがない。
「ふう、さすがに少々疲れたな」
そして後から考えれば、まだ他にも勝ち筋があったことに気づいた。
私が推進剤を消費しているように、ファンネルも推進剤やエネルギーを消費しているのだからもう少し粘ればファンネルは補給のために本体に戻す必要があったのだ。
その時に攻めてに移ればもっとスマートに勝つことができただろう。
さすがにストラティオティス4機と80基のファンネル、ミソロギアの生産作業を並行して行うと思考能力が低下してしまうな。