第二百五十二話
「「「「…………………………」」」」
プルシリーズ(プル、プルツーを除く)は屍のようだ。
難易度HARDは当然NORMALより更に酷である。
アレンと一騎討ちになりファンネルが解禁される。
ただ、プルシリーズの予想では一騎討ちになることが問題だと思っていたのだが、それは大きな間違いであった。
本当の壁はファンネルにある。
難易度という縛りが存在するアレンだが、それがまた別の効果をもたらしていて、生産片手にではあっても、アッティスほどの砲塔もファンネルもないし、相手が減ったことで相対するファンネルも減ったため、思考を、集中力を削がれる要因が減った。
そうなるとアレンは自身の機体とファンネルに割く力が強くなり、その動きはプルシリーズのファンネルとは動きが違い過ぎて、終わった後のデータでキルレシオが3:1であることがわかった。つまり大体だが、アレンのファンネルが7基堕ちるとプルシリーズのファンネルが全滅するという計算になる。
そしてファンネルが全滅してしまえば、そこからは一方的な戦いとなり……ご覧の通りの屍の山を作り上げたのだ。
(難易度の設定を間違えた気がする)
自分で設定したものの、どうもNORMALとHARDの差がありすぎたように思ったアレンはどうしたものかと悩む。
このままでは上位ナンバーはともかく、若いナンバーの次回のやる気に悪影響を及ぼすと懸念しているのだ。
アレン自身もアッティスとMSの違いがこれほど出るとは予想しておらず、改めて研究と分析を行うことを決めた。
「次は俺だけど……さすがにあれを見た後じゃな」
無理だろ、とカミーユが諦めた表情を浮かべる。
カミーユの操縦技術は未だに若いナンバーを上回っているが、それはあくまでファンネルを抜きにした話であるし、そもそも最近は訓練こそしているがMSでの戦闘から遠のいている上に研究もしている関係もあって上位ナンバーには大きく劣る。
そしてプルシリーズの屍の山の中には上位ナンバーも含まれている。つまり、カミーユが戦っても蹂躙されるだけで訓練となるか疑問なのだ。
ちなみになぜその実力でカミーユがHARDを選択したかというと、隊を率いる者であるからという理由でアレンに強制された結果である。
「だからフォウとロザミーと組んで戦いたいんだが……」
「わかった」
安易ではあるが人数を増やすことでどうにかなるかは別として、1対1よりは幾らかはマシだろうという判断だ。
しかし、そこで待ったコールが入る。
不公平だ!という声を上げたのはプルシリーズからである。
「よし、なら小隊を作れ、もう1巡するか」
そうすれば不公平ではないだろう。という力技で解決を図るアレンに再び待ったが掛かる。
「父様、さすがにそれは無理があると思います」
プルツーである。
「父様の時間は貴重でしょう?今日はこのあたりにしておいてはどうでしょうか」
「えー、私まだやってないよー!」
「それは私もです。しかしアレン父様の貴重な時間をこれ以上使うのは心苦しい」
そう言われてアレンは時計を見ると自身が予定していた時間を大きく過ぎていることに気づく。そして、思っていた以上に疲労していることにも気づいた。
(サイコクッション、つまり発光現象を引き起こすのに予想以上に負担が掛かるのか?MS戦闘はアッティスのそれとは違って細かい作業が多いのは確かだが、これほど疲労するほどではないはず……)
新しい研究材料が見つかったことでアレンは模擬戦を中止することとした。
プルツーはアレンの心配が第1ではあったが、実は若いナンバーの精神が折れかけていたことに気づいて声を掛けたのだ。
実際、若いナンバーはホッと肩をなでおろしている。
日頃のアレンなら気づかないはずがない。
しかし、現在は模擬戦の枷として共鳴を封じているために相手がどう思っているのか読み取れず、今までそういった気配りは本人も無意識の内に共鳴を頼ってきた。そのために常人ができる気配り、空気を読む力がなく、ある種の暴君化しているのだ。
思わぬところで常軌を逸脱したニュータイプ能力の弊害現れた形である。