第二百五十三話
「やっと完成したのか」
「アレンが次から次へと新技術を作り出すからなかなか作れなかったんだが……それに俺は俺で忙しいのは知ってるだろ」
それは言い訳だろう、とは思ったがいらぬ口論は時間の無駄であるから口には出さないでおく。
私がプルシリーズと戦って早半年経ち、0093年となったのだが、あの後は大変だったな。
あの時ニュータイプ能力を制限していたせいでプルシリーズに精神異常が発生していることに気づかず、日常レベルに戻した時に発覚。それからカウンセリングを——しようとしたのだが、私という存在自体がトラウマのようなものとなってしまった検体が多く、データ収集が捗る……ではなくて、組織運営に支障が出る可能性があるのでスミレやファがカウンセリングを行うこととなった。
もっともその手の専門知識がない2人には私が軽く手ほどきをした……のだが、なぜか「そんな知識があるなら正しく使ってください!」と懇々と言われたのが解せない。
私は正しく知識を(研究に)使っているというのに……やはり凡才には天才を理解できない……スミレも一応天才の部類のはずだが??
さて、横道に逸れたな。本題である何が完成したかと言うと——
「やっとカミーユ専用機の完成か」
(あまり完成させたくはなかったけどな)
「これは、わかりやすいぐらいにお前が過去に乗っていたZガンダムの後継機だとわかるな」
見た目はほぼそのままZガンダムである。
違いと言えば機動性や運動性はもちろんだが、最大の違いはアンダーサイコミュが搭載され、有線式ファンネルことインコムも搭載されていることである。
カミーユはファンネルを使えないことはないが、自身の操るMSのパフォーマンスが下がることを嫌っている。
それを解決するため、元々はオールドタイプでも使えるように開発されたインコムを搭載させたようだ。
実際、インコムはオールドタイプ向けというだけあってニュータイプが扱えば反動も少なく、操作も難しくない。
ただし、そもそもインコムというのはファンネルと比べると有線であることを差し引いても自由度が低く、動きがパターン化されている……というかパターン化させずに自身で全て操作するなら有線よりも無線であるファンネルの方が操作は楽なのだ。
「時間を掛けた割には前とそう変わらない機体というのが釈然としないが」
「色々考えはしたんだけど、やっぱり俺の相棒はこいつかなって」
自身で設計に携わり、戦場を共に駆けたのだからわからなくはないがな。
「それに以前よりも機動性が倍以上になっているんだし、いいだろ」
「そのかわり私の対Gスーツを着用しないとGに耐えられないのだろう?」
「ぐっ、それはそうだが……」
私の対Gスーツがまさかこのような形で日の目を見るとは思わなかったが、私のように身体的な理由でならともかく、対GスーツありきのMSというのはいいのだろうか?(プルシリーズしか操縦できないMSを開発している段階で同じ穴のムジナだ)
「これで本格的にカミーユのパイロット訓練ができるな」
「それは遠慮願い——」
カミーユが全てを言い終わる前に肩に手を置かれ——
「カミーユさん、いらっしゃい」
「歓迎するよ。カミーユ隊長」
「辛いのは最初だけです。段々と気持ちよくなってきますよ」
「隊長、がんば」
プルシリーズの歓迎(歓迎とは言ってない)の声にカミーユは盛大に溜息を付いた。
「せめて慣れるまでは普通の訓練にしてくれ」
「ああ、普通の(プルシリーズと同じ)訓練にしてやろう」
(あ、絶対理解してないな)