第二百五十四話
「そういえばこのMS、名前はなんだ」
「色々考えたんだがわかりやすくイータにしようと思う」
ゼータ(Ζ)の次だからイータ(Η)か、安直だが、妥当とも言えるな。変に凝った名前にすると面倒だ……ストラティオティスはやはり長かったか。
「ところであのヘッドは問題ないのか?あれはΖと同じデザインだが……」
「ああ、問題ない。あれは元々俺がデザインしたものだからな」
そうだったのか、確かに今までのガンダムタイプとは作りが違ったが、そういう理由か。しかしこういう場合は契約で著作権はアナハイムに有りそうだが……まぁ何かあれば言ってくるだろろうし、その時はその時だ。
話し合い(コロニー落とし級の物理)でもすれば解決するのも難しくないだろう。
そして早速カミーユとプルシリーズ(若いナンバー)の模擬戦をすることになったのだが——
「改めて見ると難しいものだな」
イータとキュベレイストラティオティスでは大きさはイータは17.5mとΖよりも若干小型化され、ストラティオティスが30mである。
攻撃力、防御性能などは圧倒的にストラティオティスの方が上であるが、やはりサイズと後発であることから運動性は劣り、可変で推進を集中できるイータの方が加速性と最大速度は上回るようだ。
もっとも——
「それも使い熟してこそだがな」
プルシリーズを翻弄しているのは間違いないが、勝敗自体は今の所10:0でプルシリーズの勝ち越しである。
本来ならカミーユはプルシリーズの若いナンバーに負けることはあまりない。にも関わらず、この成績なのはイータを乗りこなせていないからだ。
特に可変時の最高速度はおそらく対Gスーツを着た状態でも私では耐えられない……そもそもクィンマンサをも上回る速度であるのだからクィンマンサを操りきれないカミーユに操縦できるはずもない。
つまり、現在の状態ではΖで戦った方が強いのだ。
「そもそも一騎討ちに向いているのか、という話しでもあるか」
Ζのコンセプトは白兵戦ではなく、一撃離脱戦法である。そうである以上、イータもそれに準ずる。
そしてそれを無視して正面切って戦うというのは……汎用兵器を大きく凌駕する量産型決戦兵器とも言えるストラティオティス相手とするのは難しいと言える。
ただし、普通のMS相手には問題ないだろう。
連邦に多く配備されたジェガンや最近発表されたネオ・ジオンの次世代主力機であるザクIVが相手なら特に問題ないだろう。
ザクIVは私が設計したザクIIIとは別系統のもので、MSの始祖と言えるザクIIの再現を目的として開発されたものらしい……が、実際のところは私が設計したMSを排除したいがために作られたあまり出来のよろしくないMSである。
確かに拡張性には富んでいるように見えるかもしれないが、私からすれば何者にもなれないMSと思える。
しかも、裏ではアナハイムが関わっているようなのだが、後3年で辞めることを決めたハマーンは少しずつ自身の影響を時間を掛けて減らしていく方針に切り替え、私達がネオ・ジオンの何かを開発することももう無いだろうな。
まぁザクIIIには拡張性はともかく、コストの面から維持するのが難しいのはわかるが——
「あ、また堕ちたか。しかし戦闘時間が伸びている以上は乗りこなせてきているのだろうな」
問題は何処まで乗りこなせられるか……やはりカミーユも身体を改造すべきだと思うがな。