第二百五十八話
ジャミトフは見事アレンの説得に成功した。
その変わりに両腕と無事である右足を魔改造することが決定した。
ちなみに張本人であるシローや配偶者であるアイナの意見は全く聞かれていないし、聞くつもりもないが、シローはその案に乗り気になっていた。
アイナは反対したが、やはり守る力はあったほうがいいと語られ、意見を飲んだ。
「そうだな。安全性や効果のほどが気になるだろうからデモンストレーションとして施術を見せるとしよう」
「その方がいいだろうな。いくら口で説明したところで見てみんと納得でき——「というわけでジャミトフを検体とする」——は?」
「自分が勧めるのだから当然自分が受けるのも異論はないだろう?」
そう言うやいなやアレンは触手を操り、ジャミトフを拘束する。
「ほ、本気か?!」
「もちろんだ。それとも私が失敗するとでも?」
「いや、そうは思わんが」
「なら問題ないな」
そして触手が注射器をジャミトフの腕に突き立てると瞬く間に腕がダランと力なく垂れ下がり、続いて包み込むように無菌シートを張り、それにホースを接合する。これでシート内を無菌化させる。
更にジャミトフを全裸(武士の情けで触手が前は見せられないよ!している)にして全身を消毒、他の触手はメスやガーゼなどを取り出し、次は両手両足が入った培養カプセルが運ばれてきた。
「では、手術を行う」
((え、ここで?!))
準備を見ていたのだから察してもいいとは思うが、常識的に考えれば診察室とはいえ、この場で手術を行うなど戦場でも無い限りありえないので仕方のないことだろう。
「さて、いつもなら四肢全て同時に行うのだが、観客への配慮としてとりあえず片腕だけとしよう」
(((絶対配慮する部分が違う!!)))
「では、いくぞ」
次の瞬間、何のためらいもなくジャミトフの腕が切り落とされた。それはまるで熱したナイフでバターを切るかのようなもので、切られたというのに血が流れず、せっせと培養カプセルから出した腕を添えると切断面に4本の触手が入り込んでクネクネと動くこと4分ほど経つと全ての触手は抜け出、自身を消毒し始める。
そして他の触手が切断面を何かを穴埋めするかのように塗りたくり——
「ジャスト5分だ。最速記録は塗り替えられなかったか」
「……え、もう終わり、なのか」
「その通りだ。天才の私がこの程度の手術に何十分も掛けられるか。時間が勿体無い」
その発言を否定することはシローにもアイナにも、実験台とされたジャミトフすらもできなかった。
人の腕を交換するのにカップうどんが出来上がる(ラーメンより若干長いよね)のと同じような速度で仕上げるなど……いや、否定する部分があるとしたら[天才]などでは役不足であるというところだろう。
ただし、これは種がある。
本来は精密検査を行って神経や筋肉の本数や質などを把握しておく必要があるし、腕の長さなどを計測してそれに合わせた新しい腕を用意する必要もある。
しかし、ジャミトフはミソロギアの住人である以上、アレンの定期検診を受けている……というより内臓は100%取り替えられているのだから今更その程度のことができないわけがない。
アレンとしても今までやり残した仕事の一部を解消できてスッキリするぐらいである。
もっとも最終的には四肢どころか首から下を全てを取り替えるつもりでいるのだが。
「さあ、残りも取り替える……前にそろそろ腕の麻酔が切れてきただろうからこれを握ってみろ」
言われるがままにジャミトフは渡されたかぼちゃを力一杯握ると……粉々に消し飛び、やった本人も見ていたシロー夫妻も驚く。
「まぁこのようになるわけだ。さて、手術を続けるぞ」