第二十六話
「……どこからどう見てもアレンはニュータイプだヨ?」
「うむ、間違いない」
2人は何を言っているんだ?私がニュータイプなわけがないではないか。
「……人の過去を見たりすることがあると言ってなかったか?」
「結構見るが興味ない」
「……死者の声が聞こえたりは?」
「あれはうるさいな。研究の邪魔で仕方ない」
「……相手の考えていることがわかったり?」
「表情や雰囲気でだいたいわかる……まぁ、結構相手の思念が伝えて来るからその必要もないが……」
「「……ニュータイプだ(ヨ)!!」」
何を言っている。これぐらいオールドタイプでもできて当然だ。
ニュータイプのそれとは月とスッポンなはずだ。
「……一応確認しておくが……アレン、お前はニュータイプ検査を受けたことがあるか?」
「受けたことはないな」
……え?ハマーン達の反応から察するに……私はニュータイプなのか?
「間違いないな」
「それどころか多分私達より才能あるヨ」
いや、例え私がニュータイプの素質があったとしてもハマーン達ほどではないだろう……なんて言っていた過去の私をぶん殴りたい。
独立同盟(ミゲル兄妹達が属している組織)のラボに向かい、ニュータイプ検査を受けたのだが……どれもこれも見たことがない数字が叩き出されていた。
と言うかグラフが振り切ってて酷く見にくいぞ。
「……私がニュータイプだとはな」
「いや、私は何の疑いもなかったぞ」(ハマーン)
「私もだ」(シャア)
「付き合いが短い私もネ」(カムジ)
……知らぬは本人ばかりなり、というやつか。
と言うか、先程まで揉めていたはずのハマーンとシャアはいつの間にか和解したらしい。
まぁギスギスした空気はストレスが溜まるので解消したならそれでいいのだが。
「それにしてもこの結果は少し……いえ、かなり異常ですよ。既に別の人類じゃないかと思うぐらい」
ナナイ、そんなこと改めて言わなくてもわかっている。本職はニュータイプ研究だからな。
最初こそ計測器が故障しているんじゃないかとハマーンやカムジ准尉でテストしてみたが正常値しか計測できなかった。
ただ、ハマーンの検査結果が以前より随分向上していることが確認できた。
アクシズより変化がある現環境が成長を促している……と考えるべきなのだろうか?
となると私がニュータイプとして成長した原因は………………研究室に籠もっていたからか?
「是非検体になってください」
「気持ちはわかる……わかるが断るっ!」
何が悲しくて研究者が研究されねばならんのだ。
そもそも私の身体は私のものなのだから私が研究するに決まっているだろう!
問題があるとすると心理誘導による強化訓練が施せないことだな。
答えがわかるのに誘導されるなんて間抜け過ぎる……自己暗示でどうにかできるだろうか?
「しかし、そうか……私はニュータイプだったのか……フフフフ」
「……ハマーン、私達は目覚めさせてはいけないものを目覚めさせたのではないか?」
「……そんなことはないだろう。あれほど楽しそうではないか」
「……ハマーン様、ちょっとアレンを特別視し過ぎだと思うヨ?」
これは新たな妄想……発想が湧いてくるぞ。
ああ、早くアクシズに帰りたい……いや、そこまで待てんな。
よし、早速スクラップだっ。
「と気合い入れたというのに何の呼び出しかね」
「集合してもらったのは——」
シャアの説明によるとマハラジャ提督が病気、ハインツ少佐というマハラジャ提督の側近からアクシズのタカ派にクーデターの動きを察知したという連絡がリカルド(原作で言うロベルトの本名)から入ったらしい。
マハラジャ提督の方はともかく、クーデターとかまた面倒な……しかもその勢力が大きすぎて迂闊に手が出せないとか……まぁアクシズは元々戦争の痛みを知らずに負けたため不完全燃焼状態、新たに移民してきた者は連邦を良しとしない人間ばかりという段階でタカ派寄りの思想であることはわかっていたことだがな。
私ならエンツォ・ベルニーニをデラーズ・フリートの支援部隊としてこちらに派遣してアクシズから切り離すがな……これではエンツォ・ベルニーニがハマーンの本国視察にシャアを同行させたことと同じだな。
「提督のご様態は?」
「今すぐどうにかなるというわけではないようだが……あまり先は長くないようだ」
「そんな……」
マハラジャ提督が死ぬなら別にタカ派でも良い気がする。
現在のハト派にタカ派を抑え込めるだけの力を持つ提督はいない。
強いていえば名声と戦闘の実力でシャア、次点で世襲と未熟ではあるがカリスマを持ち、優れたニュータイプであるハマーンだろうか?
しかし、シャアは叩き上げの将校で、部下としては使い勝手がいいだろうがトップに据えるには嫉妬や僻みなどもあるだろうし仕事が熟せるかも疑問だ。
ハマーンは……時期尚早、もう少し成長してからでないと力不足だ。何より彼女の気質ではハト派が望むようなトップにはならないだろう。
まぁ私は研究を続けさせてくれるなら誰でもいいのだがね。
「出発は36時間後だ」
……せっかくスクラップを揃えたというのに……いや、あまり大きい物ではないし持っていけるか?