第二百七十一話
途中でデータ消えた!!
移動用コンテナ船では通常の入管手続きはハマーンを通して行えば可能だろうが、悪目立ちすること請け合いなので居住艦に乗り入れる。
そして、そこで迎え入れるのが——
「アレン!!」
「「「ようこそいらっしゃいました。アレン様」」」
アレン成分欠乏症で、ハイテンションにしか見えないのに瞳からハイライトが抜け落ちているハマーンと仕事に支障が出ない程度に集ったプルシリーズで、横断幕や薬玉、鏡開き用の酒樽(中身はノンアルコール飲料)、シャンパンタワー(中身はノンアルry)、千羽鶴などが用意されている。
とても1時間前にアレン来訪を知った歓迎とは思えないものであった。
これらは日頃から仕事や訓練の合間に、いつかアレンが訪れることを期待してコツコツと準備していたのだ。涙ぐましい努力である。
ちなみにプルシリーズはこういう息を合わせてアレンを呼ぶ時は敬称を『様』で統一することにしている。
日頃は個々にパパや父様やお父さん、創造主、神、ご主人様などの敬称をつけているが、こういうきちんとしたい時にはそれが弊害となるためだ。
「出迎えご苦労。皆、元気そうで何よりだ」
アレンを捕捉し、目にも留まらぬ速さで突撃をかましたハマーンを触手で捕縛しつつプルシリーズを労うアレン。
「アレン!アレン!」
子供が親を求めるような声でアレンを呼ぶ声をスルーして捕縛して宙に浮かばせて歩く。
元々ハマーンの機嫌取りという目的であったはずなのにそれを無視するかのように振る舞うアレンに暗黒面に堕ちたハマーンとアレンが来ると知って一転、壊れんばかりのテンションアゲアゲのハマーンの両方を知っているプルシリーズはこれからどうなるのかと背中に冷たい汗が流れる。
「ハァ、ハァ、アレン……アレン……こ、これはこれでありかも——」
そんな声が聞こえてきた時に触手はまるで汚いものを捨てるかのようにペッとハマーンを投げ捨てる。
ハマーンが何やら危険な方向の扉を開こうとしているのを感じての処置である。
(妙な扉を開こうとしているのはともかく、随分とこの短期間にニュータイプレベルが上がっているな)
以前から2位のプルツー、トップのハマーンというのは変わりなかったのだが、ここに来てハマーンがプルツーを引き離しているのを感じ取った。
(やはりトラウマ型のトレーニングは効果が大きいな)