第二百七十三話
突然ラスボス(ネオ・ジオン武断派):フル・フロンタルが現れた!
ニュータイプ能力を封じて方向音痴になったラスボス(真):アレン・スミスが現れた!
そして周りには誰もいない!
「こんな状態で、こんな場所で会えるとはこれは私の日頃の行いが良いからだろうか。それともシャアと同様にお前の運が悪いのかな?」
「いきなりご挨拶だな。何処のご子息か知りませんが……」
「さて、お前がどの程度のものか——」
——ミテヤロウ——
「——ッ?!」
アレンは抑えていた能力を部分的に解放する。
それはアレンの本来の力を知る者にとってはまだ児戯の範疇であるが、それは知る者の感覚が狂っているだけであり、見知らぬニュータイプにとってそれは恐ろしいほどの圧力(思念)である。
だから、フル・フロンタルが意識せずに反射的に銃の引き金を引いてしまうのも仕方のないことなのだ。
「少々不躾だったな。これは不問としよう」
しかし、それでアレンがどうにかなるのならアクシズにいた頃に既に死んでいるだろう。
銃弾はこちらも半ば反射的に動いた触手によって包み潰された。半ばというのはいつもなら銃弾を弾くところだが、さすがに通路でそれをやれば跳弾でいらぬ損害が発生することを考慮してのものである。
「その武装は親衛隊の?!」
(そういえばプルシリーズがハマーン暗殺未遂の件で大々的に使ったと報告にあったか。うっかりしたな……まぁ身元がバレたところで特に問題はないか。というか撃ったことの謝罪が先だろう)
自分には通じないとはいえ、さすがに銃口を向けるどころか実際に発砲したにも関わらず、謝罪の1つもないことにイラッとしたアレンは触手を文字通り目にも留まらぬ速さで動かしてフル・フロンタルの持つ銃を斬り捨てる。
「あまり銃口を向けられているとまた撃たれないかと思いこちらで処分した。問題ないな?」
問いかけているもののアレンの中では既に答えは確定している。そしてそれを否定することはプレッシャー(アレン基準で弱)を受けているフル・フロンタルにはできなかった。
そのかわりに——
「アレン……スミス……か」
ハマーンの親衛隊が使うMSがアレンの開発したキュベレイ、その全員がニュータイプであることからアレンの関与は確実視されていた。
だが、今までその確証を得られるものはなかったが、身体的特徴(特に身長が低いこと)と親衛隊が使っていた触手が合わされば気づく者は気づくだろう。
「やはり気づいたか」
「ああ……いや、すまない。発砲するつもりはなかったのだが……」
「存外素直だな」
シャアを模した存在であるからシャアのようなひねくれ者だと思っていたアレンだったが、少し考えを改める。
「よし、もう少し私が見てやろう」
アレンが解放したのはあくまでニュータイプとしてどの程度のレベルかを知るためでしかなく、今度は共鳴して相手を知るレベルにまで解放する。
「こ、これは?!なんだ??私の中に!!」
「ほう、見かけはシャアを模していても掲げる理想には随分と違いがあるな」
「やめろ!私を見るな!!」
「しかし、このような理想を掲げてなぜハマーンと敵対をする……ああ、私の存在が邪魔か。確かに私はネオ・ジオンにとっては邪魔な存在でしかないからな」
「やめろぉ!!」