第二百七十五話
申し訳ない。
最近忙しくて書けぬでござる。
というわけで数奇な出会いによって武断派幹部の家を巡ることとなったアレンとフル・フロンタルの2人と遠巻きに発砲音で急遽駆けつけたプルシリーズ達が護衛している。(発砲音がしたのにも関わらず野次馬が来なかったのはプルシリーズが親衛隊の権限で規制していたからである)
既に何件か家を巡った。そしてフル・フロンタルの疑問は更に膨らむ。
(なぜ何もしない。何かの謀の前の下見というならこの化物直々に来る必要はない。ならばこの化物直々に動く必要があったはずなのだが……)
本当のところはフル・フロンタルにはわからないところで調査を行っている。
正確に言えば、フル・フロンタルに認知されないように思念を飛ばし、先程体験したような侵食とも言える共鳴を起こして思考や過去を読み解いているのだ。
この行動はハマーンが自身の引退後に誕生する正式なミネバ政権の憂いを払うための下調べである。
これはこちらに来てからハマーンに頼まれたことで、情報部などという第三者が見聞きした程度の情報などよりも確度が段違い……というより本人すら理解できない、把握できない、したくないものまで引き出せるのだからこれ以上の諜報員として優れている者はいないだろう。
ちなみにそれを体験しているフル・フロンタルがなぜこの考えに至らないかと言うと、ただ単純にまだ心の傷(トラウマ)が癒えていないので本人も知らず知らずに目を逸らしているだけである。事実、精神を立て直した時にはそれに思い至っている。
そして、これから1年に掛けて次々と武断派幹部やその側近左遷されたり行方を暗ましたりするのだが、それは割愛する。
「やはり敗戦国であったとは言ってもさすがサイド3、物とサービスが充実している」
観光も兼ねて移動している途中でミソロギアとサイド3……ズム・シティを比べるとやはり経済、人口規模の差があることを改めて自覚したのだ。
元々アレンは街というものを体験したことはほとんどない。
幼年の頃から独自に数字と理論を教科書として育ったことで社会の構造がどのようなものなのか、人間がどういうものなのか、道徳とはどういうものなのか、法律はどういったものなのか、それらは知識としては知っていても実際に利用したものは一般人と比べた場合少ない。
今までは目的があり、それに突っ走る最低限のことしか行ってこなかったアレンはミソロギアを運営するようになってからやっと社会というものを正しく知ろうと思っている。
(最近はハマーンの護衛任務を熟した個体とカミーユ隊とミソロギア残留個体との差も顕著になってきている。やはりもう少し通常の社会に近づけるべきなのだろうな)