第二百八十一話
「というわけで作ってみた」
思い立ったが吉日ということで1度ミソロギアに帰り、全裸専用機を製造して帰ってきた。
「まだ5日しか経っていないのに私の機体だと?」
「…………そんな雑事のために寝ずに待っていた私を放置していったと?」
所要時間5日の内4日はハマーンにミソロギアとサイド3を短期間で往復できることを知られないための期間、つまり実質1日で仕上げてきた。
ついでに溜まっていた仕事も片付けてきたので滞在時間が増えたのだが……この様子だと知らせずに帰った方が良い訓練になるか?ちょうどよくストレスも幾分か軽減されているようだし——
「ところでアンジェロ中尉は大丈夫だろうな?」
「……誰のことだ?」
「アレン、お前が触手でぶら下げているゴミのことだ」
「…………おお、すっかり忘れていた」
全裸を連れてくる際に説明が面倒で問答無用で後ろから首を掴んで引き摺ってきたのだが、その時に一緒に誰かが居たようで騒いで煩くて触手で首をキュッとして放置してまた騒ぎになると思い、捨てずに持って帰ってきたんだったな。
とりあえず、リリース。
「怪我はないはずだ。一応手加減……していたはずだ」
半ば無意識で行ったことだがそのあたりは天才の私であるからさじ加減を間違えているとは思えない。私は私を信じている。
……うん、やはり脈は安定している。さすが私。
「さて、早速だが機体を調整するために操縦してもらおう。お前が持ってきたデータにはお前自身のデータもあったのでそれに合わせたが、それ自体ももう古いデータだから参考程度にしかならないからな」
もちろんクィン・マンサを使った時のデータもあるが、それもあまり参考にできない。なぜならこの機体にはサイコミュコントローラーが備えられておらず、一般的なジオン系列のコクピットにしているからだ。
もちろんだからといって甘い調整はしていないので問題は少ないと思うが自身の作品、しかも専門分野で手を抜くというのはいくら玩具程度の機体であったとしても認められない。
「というわけでさっさと乗れ」
「しかしアンジェロ中尉の——」
「早く乗れ!私とアレンの時間を無駄に使わせるな!」
「了解」
さすが軍人、上意下達はこういう場面では便利だな……辺境に行き、プルシリーズの教育に目処がたったらそちら向きのクローンでも作り出してみるか?正直、プルシリーズには思い入れが強すぎて消耗品として使うには気が引けてしまう部分がある。
消耗を前提にした兵士……計画だけはしておいても損はないか。辺境に行くから戦う必要はないだろうが、遠慮なく使える労働力はあって困るわけではないし……
「これは……想像以上だ。思ったとおりに動く」
などと考えているといつの間にか全裸はMSに乗って宇宙へと飛び出していた。
「随分良さそうな機体だが、大丈夫なの?」
「あれぐらいなら問題ないはずだ」
あの機体……仮名としてスタインと名付けているが……は通常のMSとサイズ的にはそれほど変わりないニュータイプ専用機となる。
サイコミュは搭載しているが機体制御に特化したものであり、射撃精度を高める火器制御やファンネルも未搭載である。
それにアレン手製のサイコミュも使用しておらず、性能的には2ランクほど下がる代物である。
「……通常のMSサイズにサイコミュ搭載なんてできたのね」
「やろうと思えば可能だ。しかし、小さくするメリットがないからな」
ビーム兵器の開発は未だに続いているし、その出力は向上している。そのため、より遠距離から、より高威力、より高精度を必要としている。