第二百八十七話
ニューオーダーが結成してから4ヶ月経ったわけだが……。
「思った以上に勢力拡大しているな」
やはり人間にとって地球というのは特別な意味を持つのだろう。
半年として経たない組織が既に30もの基地を支配下におくことに成功したという報告を得た。
地域はヨーロッパ各国と地中海沿岸のアフリカ北部、そしてカナダとアメリカ東岸少数といった感じで広がっていて、今後もアフリカで急速に拡大すると予想される。
どうやらニューオーダーはもっとも古いであろう信仰、自然崇拝で地球を崇拝対象に掲げ、転じて宇宙にある人工の大地であるコロニーや月は自然に反するものとして敵視するという流れである。
スローガンは、青き清浄なる世界のために、などというオールドタイプの塊かのようなものだ。そして、何処かテロリスト達が口にするものと同じような声色を含みつつある。
育て過ぎれば間違いなく現実となるだろうな。この思想は。
というかこれは言葉を変えているが結局はジオニズム思想の地球版でしかないことに気づいているだろうか?主に相手の主張を無視しているあたりが特に。
「とはいえ、ここからが正念場と言えるか」
先日、ついにエゥーゴとアナハイムに感づかれたことを確認した。
まだニューオーダーという存在を認識したわけではなく、物流に違和感があり、またジオン残党か、新たなテロか、それとも大規模な犯罪組織が動いたかと調査と警戒を始めた。
「MSを増産しすぎたな」
支配する地が増えれば戦力増強と懐柔も兼ねてMSの一新を進めていたため、MS増産を行う必要があった。
MSというのは特殊な資源を多く使う。そのため大量生産を始めるとそれらの資源の相場価格が上昇してしまう。
私達や不死鳥の会ならばミソロギアかネオ・ジオンの膝下であるサイド3で製造して運ぶので足がつかなかっただろうが、ニューオーダーが掌握を急いだことと他のスポンサー達が利を焦ったことで仇となった形だ。
もっともジムや鹵獲されたザクIIJ型が現役である場所が存在するので気持ちはわからないではない。
「そろそろこちらからは手切れすべきだ。これ以上の支援はアナハイムの目を誤魔化しきれるかわからん」
「そうだな」
ジャミトフが言う通りだ。
私達はアナハイムの本拠地の月の目と鼻の先に存在しているので常に監視されている。
常ならば監視するだけだが、テロリストに関与していること証拠が片鱗でも確認されればどうなることか……最悪は月駐留部隊という名のアナハイムの私兵部隊をこちらに差し向けてくる可能性もある。
負けることはないが、無用な争いを行うのは愚というものだ。
それにニューオーダーに裏で動いている私達(宇宙に住む者)のことが知れれば更に厄介なことになりかねない。
「……最後の置き土産にフラグシップでも渡しておくか」
MSは量産型ばかり渡してきたが、高性能機を1つぐらい贈っておくことにした。
これは不死鳥の会や地球圏の企業のMS開発を煽るためのものである。
私は万能なる天才だと自負しているが(身体面を除く)時間は皆平等に流れる。つまり、研究開発が行えるなら誰よりも優れているが、時間という敵だけには勝てない。であるから数多き凡人にそれを埋めてもらうため、私の技術を土台として次を見せてもらいたい。
そしてそれをまた私が昇華させれば大きな時間の節約となるだろう。