第二百八十九話
全裸からの協力要請は断ったが、ネオ・ジオンと連邦の対立が真実味を帯びてきている以上、ただ断るだけというのも問題がある。
なので全裸専用機と同系統の機体を3機ほど渡しておいた。
そういえば全裸と縁ができたことでハマーンを監視していた狂信者の目が緩んだらしい。
おかげでこちらに融通ができるようになったとハマーンは喜んで報告してきた。後、仕事が少し減ったとも。
まぁ今までの情勢では武断派は摩擦となる存在であったため多少疎まれていたが、武断派は武断派なりに国を思っているのは知っている。
なにせ、ジオンであった期間を込みにしたところでネオ・ジオンは新興国であり、腐敗が進むにはまだ早い……といっても1番腐っていたのはジオン公国の首脳であるザビ家だったあたりが救いがないが。
「それにしても謀略というのは難しいな。ニューオーダーを結束させることで結局防備に力を割く必要が出てくるとは」
サイド3でのテロは私達も他人事ではない。
なぜならテロの後に攻撃対象のリストの中に私達も含まれているからだ。
対外的にはネオ・ジオンの下部組織にあたるミソロギアはパッと見は攻撃しやすい格好の標的だろう。
これが軍での侵略ならむしろ受けて立つところなのだが、ニューオーダーの攻撃手段として上がっている中には何処から手に入れたのかは知らないが生物兵器が含まれているのが厄介だ。
それに自爆テロなどの実行者が殺意を抱いているなら簡単に防げるが、人間時限爆弾的に何も知らぬ第三者を使われるとプルシリーズでは対処は難しく、私ですら未来予知に頼るためにどうしても対処が遅れる。
唯一の救いはニューオーダーがスポンサーとして優先的にこちらに情報を漏らしていることだが、先日のテロのように衝動的に行われる可能性も捨てきれないので油断大敵だ。
「アナハイムもやっとニューオーダーの存在に気づいたようだが、欧州の主要基地とアフリカの北部を支配下に置いて既に簡単に討伐できない勢力となったな」
「単純な戦力では既にエゥーゴやティターンズを上回っている。合同で動くならなんとかなるだろうが信用できるのか連携できるのかという問題もあるし、連邦軍はそれ以上に使えないだろう」
ジャミトフの推測に異論はない。
こうして考えると地球連邦は大きくなり過ぎているのだろう。地球を1つの国家としてしまうにはまだまだ人間の器が小さく、歴史も浅いということかもしれない。
「このまま成長してしまうとエゥーゴやティターンズを抑えて最大勢力となる可能性が出てきたが……それはないか」
「奴らには統率者がおらんからな。近い内にアースノイド至上主義の政治家や企業に振り回されることになるだろう」
エゥーゴはシャア、ティターンズはシロッコというカリスマを持つ……カリスマ?危険思想をカリスマと言って良いのか悩むが……がいるので統率されているのだが、ニューオーダーにはそのような人材は今の所いない。
影でゴップという者が動いているようだが……。