第二百九十一話
「不可侵か、具体的には」
「ニューオーダーに非干渉、それだけでいい」
「ほう、エゥーゴやティターンズへの助力などを制限せんでいいのか?」
「するつもりもない者達にそのような無駄な条件を盛り込むつもりはない」
どうやらこちらの情報はある程度手に入れているようだが、何処から手に入れたものだ。
これがただの推測であるなら問題ない。ミソロギアの情報はあまりアレンの能力もあって漏れることは少ないが誰かしらから漏れたものなら問題になる。
1番数を占めるプル達からは漏れることはまずない。忠誠度的なものでもそうだが、そもそも外部との接触が難しいのだから当然だ。
次に私やカミーユなどのミソロギアに住む、プル達以外の存在だが……これもないじゃろう。もしそういうことがあったならアレンに何されるかわかったものではないからな。
やはり有力なのは交易所の利用者か不死鳥の会か……だが、交易所の利用者にしろ、不死鳥の会にしろ結局は本当の意味でのミソロギアの情報を得ているはずもないが一応忠告しておくか。
そして本命の私の部下、つまり旧ティターンズの者達だ。
やはり元々ティターンズであったこともあってこやつらと繋がりができておっても不思議はない。
あやつらも他の者達と同じく、ミソロギアの中枢に入れていない以上は内部情報は手にすることはできておらんじゃろうが常時監視することはできるじゃろうから他よりも得られる情報は多い。
……とは言うものの本当の本命はただミソロギアの立ち位置を考えた上での推論なのだが、1度引き締めをしておく方がいいじゃろうな。
「いいじゃろう。アレンには話を通しておく」
「ほう、そこまで権限を持っているのか」
やはり何処からか得た情報というよりも推測か?
「権限などという仰々しいものではない。ここの全てはアレンの意向で決まる。それを説得できるかどうかだけだ」
「コロニー1つの独裁国家か、今までの製品を見ていると恐ろしいものがあるな」
「助言をしておく。アレンを敵に回すなら覚悟しておけ。エゥーゴやシロッコが手を出さないのにはアレンの技術力だけが理由ではない」
あやつの恐ろしいところはあのニュータイプという名の超能力だ。
もちろん技術力には目を見張るものがある……簡単に人類を滅亡させられるという意味では恐ろしいが、そのようなことはまず行わない……はず……多分……が、あの超能力は相手を生かしたまま殺すこともできる恐ろしいものだ。
私は既に慣れてしまったが、あのプライバシー侵害などという生易しい言葉で片付けられない感覚……オールドタイプの私ですらこれなのだからニュータイプは一体どれだけのストレスになるのやら。私は常々自分がオールドタイプであることに感謝している。
……アレンが何やら私をニュータイプに覚醒させようか、とか、あえて強化人間に挑戦してみるかなどと言っていたような気がするが幻聴だろう。(アレンによって聴覚も強化され、本来の人間の可聴域よりも上回っている。つまり……)
無論、これらのことは機密(暗黙の了解的な)であるから遠回しに警告しておくぐらいしかできんがな。
「私が直接口にすることはできんが、アレンのことを知りたければクワトロやシロッコに聞くといい。あやつらなら嬉々と聞かせてくれるじゃろう」
例え相手が新たな敵であったとしても、やつらはアレンに最大限配慮するじゃろう。
なにせ何かの尻尾などという可愛らしいものではなく、自陣で核の自爆スイッチを押すようなものじゃからな。
「……そうしよう」