第二百九十八話
Sガンダム(派閥的にはアナハイムの私兵)とティターンズのニュータイプ部隊の活躍により多くの海賊達が討伐された。
では、肝心のエゥーゴはどうしているのかというと——
「母なる大地をこれ以上破壊しないためにも宇宙の再開発!サイドの再建が必要なのです!」
エゥーゴは政治に関して力を入れていた。
これはエゥーゴ、ティターンズ、アナハイムの三者による話し合いで決められことだった。
もちろんエゥーゴも海賊討伐に戦力を割いているが、本当の狙いは政治であった。
ティターンズは前回の内紛の敗者であるし、何よりシロッコは何をしても含み……わかりやすく言えば信用できない雰囲気があり、受けが良くない。
アナハイムは企業である以上、発言力は限定的になり決定力に欠ける。
となると適任者は内紛の勝者であるエゥーゴ、つまりジオン・ズム・ダイクンの忘れ形見でもあるキャスバル・レム・ダイクンことクワトロ・バジーナしか存在しない。
故にエゥーゴは政治を、ティターンズが(アナハイムは独断で)海賊狩りを担当し、アナハイムがエゥーゴのバックアップを行うという形で協力することとなったのだ。
ニューオーダーという共通の敵ができたことでまとまりを得る。人類とは何百年経とうと根本は変わりないのだろう。
そして、エゥーゴが打ち出した政策は人類の地球からの解放という名目でアースノイド主義へ一石を投じた。
今のアースノイド至上主義は一年戦争前から存在するが、それは国力の違いによるところが大きかった。しかし現在は度重なるコロニー落としと戦乱によって地球連邦の力……マンパワーそのものが堕ちている。
にも関わらず、未だにアースノイド至上主義が蔓延している。その理由は地球に住む人間よりも多くスペースノイドが減んじたからである。
つまり、ジオンの、ギレンの失策がここに来て影響しているのだ。
そこでエゥーゴはスペースノイドの人口を増やすべく、再びサイド再建を掲げた。
根回しを行った結果——
「賛成多数でサイド再建計画を可決いたしました」
無事、可決となった。
これにはアナハイムが根回しがあったのも確かだが、そもそもコロニーというのは巨大な利権が存在する。
地球では当たり前のような空気や大地も人口的に用意し無くてはならない上に、今となっては関税が掛かり相対的優遇政策、そして、何より——
「愚かなことだな。自分達が特別だと思いたいがために他人を陥れようなどと……」
そう、地球に住む人口が減れば減るほど自分達が貴種となるという思惑から宇宙への移民を進めようというのだ。
地球連邦の腐敗は何処まで進んでいるのか……。