第三十話
アクシズでクーデターが起こった場合、また私が戦場に立たされる可能性があるとわかったため耐Gスーツの改良に取り掛かった。
最近は不本意な研究、開発ばかりしている……早くアクシズに帰りた……あ、帰ると殺し合いをしないと行けない可能性があるんだったか、なんという無限ループ。
今手につけているのは耐Gスーツの軽量化と性能向上、エロ触手の搭載化が主だ。
特にエロ触手を搭載することで腕が6本になるといえる。
そうすればもっと細やかな操作ができるのだが——
「そんなものいらぬ」「そんなものはいりません」
とハマーンとイリア・パゾムが断固阻止の構えを取っているので難しそうだ。
なぜそれほどエロ触手に嫌悪感を抱くのか……当然だったな。
しかし、便利なのも間違いが——
「変態的な生産作業はともかく、2本の腕で操作することが前提なのだ。後4本もいるMSなど存在せん」
……なるほど、6本の腕を前提としたMSか……有りだな。
いや、むしろ今まで不可能だった複雑で繊細な操縦も可能になるということだ。
「アレン……サイコミュには副作用があることも忘れるな」
……そういえばそうだった。
あまり長時間サイコミュを使用すると身体的には熱や頭痛、吐き気など、精神的には失神や錯乱、情緒不安定などの症状が現れる……らしい。今だにサイコミュを使用したことがないため体験したことはないが……ふむ……。
「1度は己の限界というものを体験しておくことも一興か……ハマーン、シュネー・ヴァイスを貸してもらえるかな」
「ふふふ、この貸し1だ」
一体いつになったらその胡散臭い喋り方とできる女()の雰囲気を醸し出す猫かぶりを止めるのやら……まさかそのまま続けていくつもりではないだろうな。さすがに素を知っている私としては微妙な気分になるのだが……主に自身の黒歴史的な意味で。
「それなら遠慮しておこう。ハマーンに貸しを作るなんて恐ろしい」
「ちょっと待って、それってどういう意味よ!」
「冗談だ。冗談。後でシュークリームをご馳走しよう」
「ならば良し」
意外とちょろいな。将来が心配になる。
というわけで本人からの許可をもらった上にシャアから許可ももらいシュネー・ヴァイスへと乗り込んだ私。
先を急いでいるため宇宙へ出るという行動はできないため、少々危ないが艦内、つまり格納庫内でテストを行うことになった。
以前イリア・パゾム等とシュネー・ヴァイスで模擬戦をしたが、あの時は私自身がニュータイプなどと思いもしなかったためオフにしていた。
実はオールドタイプでも微弱な脳波を放出することがたまにあり、その時はだいたい絶体絶命の状態だったり強敵との死闘中だったりするのだが、その微弱ながらも脳波を発するためにサイコミュが誤作動を起こすことがある。だからこそ基本的にオールドタイプが操縦する場合はサイコミュをオフにしていたのだが……おかげで私がニュータイプであることに気づくのに遅れることになった。
先の実戦の時にわかっていれば……いや、あの時はシュネー・ヴァイスがなかったので変わらんか。
さて、サイコミュの使い心地は如何程か。
「…………あまり実感がないな。機体を少し動かし——うおぉっ?!」
自分が思っていた以上に俊敏に動いてマヌケな声が漏れてしまった。
これは思った以上の反応速度だ……というか私には過剰過ぎる。この反応速度で操縦してしまえば耐Gスーツを着ていても耐えられないことは間違いない。
わかっていたことではあるがサイコミュ有りきの機体だとここまで差があるのか。
できればこれ以上は私的には体験したくないところだが……これも研究のためデータが必要なのだから頑張るのだ。私。
格納庫ということもあって派手に動くことはできなかったが、それでも私にはあまり必要ではないシステムであることがわかった。
「さて、続いてはメインディッシュだな。ゆけ、ビットッ!」
私の掛け声に応えるようにビット・キャリアからビットが飛び出すが……うん、特に疲れるとかそういう感じはない。
妙な感覚ではあるが疲れや息切れなど特に症状はない。以前より周りの人間の感情を察することが以前よりできているような気がする。
これなら以前より攻撃を避けることができる……そんな機会がないこを祈るがな。
そんなことを10分やっていたのだが特に副作用はないようだ。
強いて言えば自身が検体になってしまったことだろうか、ナタリー中尉がたまに実験したそうに見てくる……お前はシャアとイチャイチャでもしていれば良いものを。
今も私をキラキラした目で見てきている。
「さて、少し本気を出して動かしてみるか」
ビットを空間が狭いながらもほぼフルで動かす。
その結果はなかなかのものだ。
副作用や疲労も特になく、これで実戦になっても大丈夫だ……そんなことにはならないことを切に願うがな。
『……長い間使ってた私より上手く使われると釈然とせんな』
「心配せずともハマーンより上手く使えているのはビットだけで機体操作は断然ハマーンの方が優れているさ」
機体制御に使われているサイコミュを無駄にしている段階でシュネー・ヴァイスとの相性はあまりよろしくないだろう。
やはり専用機を開発するしかないか?