第三十一話
そういえばスミレ准尉(アクシズで一緒にスクラップ発明をしていた兵器開発部の女性)はどうしているだろうか。
兵器開発部は戦争を前提としている関係上、タカ派の色が濃い部署なのだが……もしかするとスミレ准尉と殺し合うことに……ならないか。彼女は私と違って生粋の研究者だから戦線に出てくることはないだろう。
もしタカ派が敗れることになった時は彼女を引き抜くのもいいかもしれない。
というかクーデターが起こらなくても是非引き抜きたい……まぁ安定した給料なんて支払えないから無理か。
スミレ准尉の新機軸のサイコミュが実現できればビットも小型化され、同時に操作ができる数も増える。それは通常のニュータイプでもそうなのだから私が使えば……エロ触手の本数が増やせる可能性がある。
「……薄ら寒い気配が……」
さすがだな、第一被害者ハマーン。エロ触手の気配を察知したようだ。
まさかとは思うがそれほど愛おしいのだろうか?……冗談だから無意識にプレッシャーを掛けないでくれ。
いや、これは……そうか、ハマーンやイリアがこれほどエロ触手が嫌っているということはこれを利用してニュータイプ訓練を施せるということでもある。
「よし、ハマーン、イリア・パゾム。今から訓練だ」
「「……嫌な予感しかしない」」
これもニュータイプの能力の一部だろうか。それとも俗に言う女の勘か?
それから1時間ほどハマーンとイリア・パゾムをヌルヌルして遊……暇潰……訓練をした。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
「……」(ピクッピクッ)
うむ、なかなか良い訓練になったようだ。
脳波の計測結果も私が受けた思念的にも満足がいくもので検体にも負担が少ないようなだからこれからはどんどん取り入れていこうと思う。
「……汚された。これは訴えるべき」
「自称紳士は何処にいった」
紳士の前に研究者なのだよ……しかし、このままだと心象が悪い上にマンネリ化で訓練効率が悪くなることも考えられる。
……こうなったらエロ触手を忠実に再現を目指して謎の液体も吐き出させるようにするか。ついでに訓練効率向上のために謎の液体に刺激に敏感になる薬も混ぜれば問題はないだろう。
よし、これで完璧だ。
残念なのことに材料がここにないので今すぐに、というわけにはいかない……残念だ。
……ん?ハマーン達から殺気を感じるのは気のせいか?もしかすると訓練延長を希望——うん、やはり気のせいだったようだ。ハマーン達は疲れて眠っている……こんなところで寝かせるのもよろしくないのでベッドに運び込むとしよう。もちろん運ぶのはエロ触手だ。
とてつもなく暇な帰還もハマーン達の訓練と耐Gスーツの改良、シャア達が郭汜持っていた大型ビームライフル(標準のゲルググのビームライフルより1.8倍の射程、ただし弾は5発、ジェネレータ内蔵でザクも使用可能)の改良など思った以上に充実した。
特にハマーン達の成長が著しく、データ収集が楽しくて仕方ない。
最初こそ抵抗されて大変だったが、このところ諦めと何かの目覚めがあったのか僅かに受け入れ始めている。
ただし、度々ジェラルド少尉が妨害してくるのであしらうのが多少億劫ではあったがエロ触手を使った戦闘の訓練と思えばさほどではなかった。
どちらかというとジェラルド少尉がいると2人の訓練が行えない(あられもない姿を見せるのはさすがに気が引けた)ことの方が問題だったな。
大型ビームライフルは改良の結果弾数が8発に増えた……本当は射程を伸ばそうとしたんだが材料が足らずに断念、シャア達からは弾数が増えるだけでもありがたいと言われたが私としては不満だ。
そしてアクシズまであと少しという領域でミノフスキー粒子が高濃度で散布されていることが判明。しかもMSの爆発と思わしきものも観測された。
十中八九タカ派によるクーデターだろうとのこと。
これで勝つか負けるかは知らないがアクシズの意思が統一されることになるはずだが……タカ派が種を巻いたことで不満を溜め込んでいるアクシズの住人は十中八九タカ派に流れることになるはずだ。
こうなると政権争いではあっても条約として地球圏への帰還、連邦への進攻はほぼ決定だろう。
しばらくすると基地からこちらに来たリカルドから通信が入った。
その内容は案の定、マハラジャ提督の意識不明の状態であることとクーデターの発生を知らされた。
それを聞いてハマーンが黙っていられるわけもなく——
「今度こそ私が出るぞ」
そう力強く宣言したのはハマーンだ。
そして隣でも強く肯定するイリア・パゾム……なんとも頼ましい女性達だ。
自称紳士を名乗るならば私が真っ先に出撃するべきところだが、本人達の意思は硬そうであるし、何より彼女達が望んで出撃した場合、私の乗るMSがなくなる。まさかエロ触手で戦うことなんてできるわけもない。
少しシャアと言い争いになったが結局はシャアが折れることとなり、ハマーンの出撃が決定した。
まぁ私が出撃するよりは戦力になるだろうな。