第三百十三話
「なあ、アレン。俺達もそろそろ実戦に出させてくれよ」
如何にも青二才が言いそうなセリフを言ったのは青二才なビーチャ・オーレグだ。
どうやら毎日毎日訓練を行っているのがお気に召さないらしい。
「ふむ、後ろにいる者達も同意見か?」
ビーチャが代表として前で発言しているが後ろにはいつものメンバーのジュドー・アーシタ、モンド・アガケ、エル・ビアンノが並んでいる。
「やっぱりプル達に守られてばっかりってのもなぁ」
「俺も!」
「私も少しは手伝えたらなって」
…………。
他の2人はともかく、エル・ビアンノ……お前はもう少し自重しろ。ジュドーをちらちら見すぎだ。まぁこれでエル・ビアンノの好意に気づいていないジュドーだからある意味間違ってはいないのかもしれないが、真剣味が薄く感じて仕方ない。
……事実として覚悟が足りないのだがな。
「そこまで言うなら試してやろう。付いてこい」
「よっしゃ!気合が入るぜ!な、皆!」
「ああ」
「これでプル達にバカにされない!」
「私はそれよりアレンの試しが怖いんだけど……」
エル・ビアンノ、心配することはないぞ。私もそこまで思いを無碍にするほど鬼ではない。
「……ねぇ。こっちの部屋って来たことがある?」
ほう、心配しているだけあって気づいたか。
「いや、ないな」
「というかこっちの部屋ってアレンの部屋からしか行けないんじゃないか?」
「むしろアレンの部屋だろ」
まぁある意味私の部屋というのは間違いではないな。
恐らく世界でここにしかないセキリティシステム、思念波照合を行って解錠し、同行者であるジュドー達の思念波を一時登録する。
これをしないとジュドー達は部屋に踏み込んだ瞬間にそれが人間だったかどうかわからないような肉片に生まれ変わることになる。……死んで生まれ変わるとはなかなか哲学だな。
そんなことは露知らず無遠慮に侵入するジュドー達は……侵入と同時に明かりが付き、部屋の全容を把握したようで表情が固まり、言葉を無くしている。
あえて私から声を掛けずに待つ。
「こ、これは……」
「こっちはプルシリーズの生産プラント、そっちは生体兵器の試作品、こっちは臓器培養槽だな」
最初に声が出たのはジュドーか、やはり精神的には1番タフなようだな。もっとも立ち直ったとは言いづらい精神状態だがな。
「何を驚いている。私は自他ともに認めるマッド・サイエンティスト。無駄に生命を弄ぶことはしないが、必要があれば生命を弄ぶ研究者だ。まさか知らなかったわけではないだろう?その代表作と仲良くしているのだから」
ジュドー達はまだまだ子供……いや、子供というより世界が狭く、汚れを知らないというべきか。
本人達はアンダーグラウンドに生きていたと思っているようだが、あんなものはまだまだアンダーといえるようなものではない。
ドラッグも人身売買も殺人も強姦もない、やっていたのはせいぜい脱税(確定申告ぅ!!)、無許可営業(廃品の回収は許可がいる)、後は窃盗ぐらい(廃品回収は許可がいる関係で無許可だと窃盗扱い)だろう。せめておやじ狩りぐらいしろ。
「それとこれは試すとは関係ないぞ?」
この程度で心を折られては面白くない。もう少しは頑張れよ。