第三十六話
ジュドー達が成人の儀を済ませて1週間経ったが、ずいぶんと精神的に病んでいるようだ。
まぁスミレやジャミトフにカウンセリングしてもらっているようだから問題ないだろう。ちなみに私は関わっていない。
まぁ元凶であるし仕方ないだろう。
しかし、ジュドー達自身も、プルシリーズも変化が生じた。
ジュドー達はプルシリーズの苦労が本当の意味で理解し、プルシリーズはジュドー達が新米ながらも戦士となったことで本当の意味で住人として受け入れるようになった。
スミレみたいな明らかに別部門ならばともかく、日頃から優しく接するファ・ユイリィですら殺しの経験があるというのに、共に訓練する戦士であるはずのジュドー達は戦士では当たり前の経験を積んでいないことからプルシリーズとしてはやはりどこかお客さんでしかなかったのだ。
なにせプルシリーズは殺しの経験は生まれて1ヶ月もしない内に経験する本当に大したことのない通過儀礼なのだ。
「多少問題があるとは言え、まとまりが強くなるのは良いことだ。こっちも随分と片付いてきたようだしな」
ニューオーダーはここのところ敗戦続きだった。
シロッコが派遣したニュータイプ部隊……ニュータイプ??……ニュータイプ????……まぁオールドタイプよりは優秀か……の活躍とネオ・ジオン派遣部隊の活躍、何より——
「やはり要注意人物だな……アムロ・レイ」
エースの存在で両軍に士気差が生まれたのは間違いない。
だが、アムロ個人の能力と新たな専用MSが掛け合わさったその強さは私の予想やニューオーダーの予想を上回るものだった。
「Iフィールドを発生させるファンネル、か。攻守切り替えが可能で応用力があると言えば聞こえがいいが、あんなサイズのファンネルでは隠蔽性が少なく機動が見切られやすい、それに肝心のIフィールドも出力が高いビームは防げんだろう。それにファンネル自体の守りが貧弱すぎて撃墜してしまえば問題はないが……手順が増えるというのはそれだけ相手に機会を与えるということでもあるか」
オールドタイプに多少の機会を与えたとしてもそれほど脅威にならない。しかし相手がアムロとなると話は変わる。少ない機会だとしても必殺の一撃となる可能性がある。
「計測ではあのビームライフルではそう簡単にはクィン・マンサIIのIフィールドを貫通することはできないと出たからにはやはりやはり次世代機の開発を急ぐか」
ファンネル展開式Iフィールドか……考えもしなかったな。
いや、攻防を一体にするというセンスの無さはともかくとしてIフィールドを展開用のファンネルというのは良いかもしれない。
特にIフィールドはサイズが大きくなれば出力が不安定になることから戦艦サイズは現実的ではなかった。
しかし、これならばファンネルとサイコミュさえ搭載してしまえば一定の防御力を得ることができる。
何度も言うが、宇宙で母艦の消失は宇宙空間で戦う者にとっては地獄だ。
その防御力があがるというなら十分検討するに値する。
「……それにしても嫌になるな。中位ナンバーぐらいは瞬殺する可能性があるというのがな」
改めて映像を見て再度確信した。
殺し合いに重要なのは自身の研磨とどれだけ不運を跳ね除けられるかだ。
何より不運というのは本当に厄介でどんなに努力しようと訪れる時には無遠慮に訪ねてくる。それは殺し合いを続ける以上絶対だ。
それを受けてなお勝ちを拾えた者が生者であり、零してしまった者が死者である。
ただ、アムロとシャアに限って言えば別の要素があるように感じるのだ。
「あいつらは不運を振りまいている……そんな気がする」
科学的にもニュータイプの能力で得た何かでもない。
ただただ漠然とした何か、あの2人は私やプルシリーズが持っていない何かを持っている気がする。
そしてその何かは決定的に私達を追い詰める何かであるとも。
「そういう意味ではカミーユとジュドーもハマーンにも感じるそれの正体は……何なんだろうな」
いや、プルシリーズとは言ったがプルツーはそれを持っている気配がする。
しかし正体が何かわからない。
「所詮天才と言われる私も人間か、当然といえば当然だが……しかし最善は尽くしておくに限る。後悔しないためにな」