第三百十七話
「ぎゃあ!?」
「くそ、なんなんだ。こいつら?!」
「無駄口叩いてる場合じゃないだろ!」
「一旦引いて立て直すぞ」
何やら聞き覚えがあるような展開である。
今回の被害者は海賊に扮するニューオーダーを順調に討伐して鼻高々で天狗になっていたネオ・ジオン派遣部隊の面々である。
現在戦っているのはプルシリーズの下位ナンバー3人とネオ・ジオンはオウギュスト・ギダン率いる2小隊が模擬戦をしている。
これはアレンはキュベレイ・ストラティオティスの後継機を既に開発することを決定したこととフル・フロンタルとカリウス・オットーから部隊の引き締めとして模擬戦を要望されたことが重なったことで実現したものである。
「これってマジなのかよ!」
「ああ、ファンネルをこんなに使えるって全員がニュータイプとでも言うのか?!」
彼らがそう叫ぶのも無理はない。
現在戦っているのは実機によるものではなく、シミュレータによるものなのでデータを捏造しているのではと疑いを持つのも当然だろう。
しかしフル・フロンタルやカリウス・オットーはそのあたりを疑っていない。
だが、あくまでシミュレータによる模擬戦にこだわった。
それは実機で勝てば問題ないがもし敗北、最悪惨敗してしまって、それが何処かに漏れてしまえばせっかく今回の海賊討伐で得た名声は消し飛んでしまうためである。
特にニューオーダーは未だに交易所に潜伏していると予想がされているのだから余計に気にする必要があった。
「ファンネルのビームならシールドで何度かは受けれる。その間にあのファンネルを落とすぞ!」
オウギュスト・ギダンはファンネルの数の多さにこそ驚いたが、その機動が鈍く、いくつかのパターンが存在することを見切り、それを素早く部下に伝える。
下位ナンバーは実戦経験が無く、訓練途中の者ばかりである。そのため、キュベレイ・ストラティオティスを十全に操ることができないのはもちろんのこと、ファンネルの動きに洗練さがないのも間違いないことである。
本来なら実戦投入されるレベルでもなく、されたとしてもファンネルによるオールレンジ攻撃要員でファンネルを動かすことだけに専念する、所謂ファンネル母艦のような役割を重点的に訓練していたこともあり、今回のような通常戦闘はニューオーダーのような宇宙初心者ならともかく、ネオ・ジオンの精鋭相手にはきついものであった。
「なんだ。ファンネルの数でビビったが思ったよりも大したことないな」
「ああ、隊長の言ったとおりパターンさえ掴めれば問題ねーな。ほら、1つ仕留めた!」
開幕のファンネルによる奇襲で2機撃破することができていたのだが、残り4機は見事な連携とMS捌きを披露して次々とファンネルを落とす。
それに動揺してしまい、ファンネルの動きが乱れ、元々MSの動きが芳しくないのに更に鈍くなる。
そして、その隙を見逃すほどネオ・ジオンの精鋭は甘くはなく、ついに1機、撃破されてしまう。
すると天秤は簡単に傾き、下位ナンバーは簡単に全滅した。
「フッ、奴はプルシリーズの中でも最弱」
「オールドタイプ如きに苦戦するとはニュータイプの面汚しよ」
「お前達、マンガもほどほどにしておけよ」
「「はーい」」
「……まぁもう少し健闘してくれると思ったのだがな。これは再教育が必要か」