第三百十九話
選抜メンバーは全裸とカリウス・オットーのご要望に応えてプル、プルツー、プル3という最初期メンバーにして最上位メンバーを3人同時にぶつけてやることにした。
「よーし、私達の凄いとこ見せてやるんだから!」
「あまりデータを与えるのは良くないと思う……が、このまま舐められたままというのは気に入らない。何より父様の名誉のためにも」
「久しぶりの出番……頑張る」
ん?プル3はプルやプルツーとそれほど変わらないぐらいに働いているはずだが?
それはともかく、この3人はいつも以上に張り切っている。
基本的に私が前線に立つことがない。
しかし、プル達はカミーユ隊や航路警邏隊として派遣されている。それをデータとして見ることは多々あるし、それを褒めているつもりではいるのだが、どうやら本人はやはり生で見てほしいという思いが強いようだ。
「しかし、この機体も久しぶりだ」
プルツーはキュベレイ・ストラティオティスを眺めて感慨深げに呟く。
さすがにプルツー専用機は模擬戦程度で露出させるわけにはいかないので今回は通常のキュベレイ・ストラティオティスで参戦することになっている。
それに最近はPLSによる指揮がメインとなっていることもあってプルツー自身が戦闘する回数が減少していることも一要因だろう。
「どっちが活躍するか競争だ!」
「負けません」
「それは相手次第だ。あの仮面やその腰巾着が相手だと競争なんてしている場合ではない。カリウス・オットーが参加するなら——」
「も〜プルツーは固〜い」
「それぐらい承知してる」
この3人は最初期メンバーということもあって他のプルシリーズとは違った信頼関係がある。
私も一言声を掛けておくとしよう。
「お前達は私の最高傑作だ。それに恥じぬ戦いを期待する」
「「「了解」」」
この3人が負けるようならハマーンを置いてでも地球圏からの離脱を早める……いや、明日にでも離脱すべきだろうな。
「ああ、久しぶりにアレン父様の前で模擬戦とはいえ戦うなんて……緊張する」
「プルツーは私達よりもアレンパパと一緒にいるでしょー。それにこの前専用機で戦ってたじゃん」
「うんうん」
「あれは……こう言ってはあれなんだが、所詮新兵器を身内にお披露目しているだけだ。それに……私達は私達を倒すために生まれてきたんじゃない。私達はアレン父様のために生まれてきた。ならばこの場で勝てと言われると緊張しても仕方ないだろ?」
「やっぱりプルツーは固いねー。でも、らしいよね」
「うん」
プルツーを固いと言って楽しげな2人だが、その表情は間違いなくプルツーと同様の戦士のそれで気迫に満ちていた。
彼女達3人は自分達はプルシリーズの中で最高傑作であると自負している。そして、自分達の敗北は自分達だけではなく、姉妹の存在意義を大きく損なうことになるという事実を背負い、常に研磨を続けている。
だからこそ、アレンはあえて最高傑作であると宣言したのだ。
『発進シークエンス始めます。3、2、1』
「プル〜出ま〜す」
「プルツー、出る!」
「プル3、出陣」
「デューン、ダニー、わかっているとは思うが手を抜くんじゃないぞ。わざわざ実機でやりあおうってんだ。あれが実力の一部でしかない可能性がある」
「心配すんなって油断なんてしない。なにせハマーン様のお気に入りだ。弱いわけないだろ」
「そのとおりだ」
対戦相手は原作ではジャムルの3Dと呼ばれる、デル、デューン、ダニーであり、優れた連携でジュドー達を苦しめ、最終的にはジュドーに撃退されるがとうとう撃墜はされなかった存在だ。
もっとも現在はアレンが用意したザクIIIF型に搭乗しているのでジャムルの3Dとは呼ばれず、3Dと呼ばれている。
彼らは1人ではエースには及ばない準エース級である。3人揃えば1人どころか2人のエース級を相手にも引けを取らない。
そう、3対3ならいくら相手がプルシリーズでも——などという現実はない。
「「「ファンネル!!」」」
これが私の全力全開、とでも言うかのように一斉に射出されるファンネル達。
その数は1機から30基、つまり3機で90基のファンネルが華麗に舞う、その光景は戦場でなければ美しく花火を思わせる芸術であった。
「は?」
「なんだそれは?!」
「……」
だが、仮初めとはいえ、ここは戦場である。
それに見惚れるような状況ではない……が、しかし——
「こんな数を躱せってのか?!」
「シミュレータで不正しているなんて言ってたバカは誰だ!!現実の方がもっと酷いわ!」
「ファンネルがMSと同じような機動しているぞ?!」
プル達の操るファンネルとプルシリーズの下位ナンバーのファンネルを比べれば下位ナンバーなど児戯に等しい。
「馬鹿な。母機が近づいて来るだと」
「まさか……このまま白兵戦までやろうってのか」
「冗談きついぜ」