第三百二十一話
宙に浮かぶ鋼の巨体。
その数、18機。
力無く、ただただ浮かぶ15のMSと威風堂々と仁王立ち並ぶ3機のMSという勝敗を見れば明らかなその光景。
「やはり人間の頭脳で全てが予想できるわけではないな」
アレンは15機のMSが自由を取り戻し、それぞれが帰還の途へついたのを見ながらつぶやいた。
結果的にはアレンの予想通り、プル達の勝利に終わった。
ただし、見積もりではプル達の誰か、確率としてはプル3、プル、プルツーという順に撃墜されるかもしくは大破ないし中破判定をもらうと考えていたのだ。
なにせ相手にはカリウス・オットー、ラカン・ダカラン、3Dという本物のエース2人、しかも両者共にアレン特製プロテインの餌食……ゴホン、被害者であるので原作よりも強化されている。(ただしエゥーゴとティターンズの内乱で終わっているため原作よりも経験は少ない)そして準エース級の3Dで他の兵士達も精鋭であるのだから無傷で終わらせるのは無理だとアレンが予想していたのも仕方ないことだった。
しかし蓋を開けてみると——
「まさかの推進剤やファンネル全損して小破判定をもらっているがこれは完勝と言えるだろう」
自分の予想を上回る成果に満足し、そしてプル達の成長も実感する。
今まで同時にこれほどの人数を相手にしながらエースを相手したことなどない上に、カリウス・オットーとラカン・ダカランというトップクラスのエースを打倒して見せたのだから当然の感想である。
「アレン博士、また恐ろしい存在を育てましたな」
そう話しかけたのは先程まで宙に浮いていたMSの中の人、カリウス・オットーである。
MSがどうのこうのというのは本当に今更のことなのでパイロットの話を振った。
こちらもアレンとカリウス・オットーとの付き合いは深くも浅くもないがその変わり長いので今更と言えば今更の話題なのだが、やはりこの戦いにおいて話すべきはそこである。
「カリウス・オットーか、あの3人はお前達が最初の頃に訓練をつけていた奴らだぞ」
「なんと……」
まさか自身が上司(ガトー)と共に訓練した相手だとは思っておらず、目を見開いている。
「以前からその能力には驚かされていたが……今回は見事な連携だった。特にファンネルの連携だ。あれほどの連携がなされては多少の数の違いなど誤差だ」
「実際やられた者の感想は違うな」
「さすがにほぼゼロ距離から包囲されれば躱せないさ。眼の前の母機だけで精一杯だった」
ネオ・ジオン側の作戦はわかりやすいものだった。
攻撃を1機に集中して撃墜するまで他2機を足止めするというもので、その足止めを行ったのがカリウス・オットー、ラカン・ダカランが率いる側近の2名だ。
アレンもその作戦自体は間違ってはいなかったと思う。ただ、運がないというだけである。
ラカン・ダカラン小隊が抑えたのがプル3、カリウス・オットーが抑えたのがプルで、撃墜しようとしたのがプルツーだった。
この撃墜対象がプル3だったならプル3の処理能力が間に合わず連携が破綻しただろう。しかし、ターゲットがプルツーであったばかりに処理が間に合ってしまい、連携が成立してしまった。