第三百二十二話
また同じような光景が浮かんでいる。
1機のMSと16機の機体が宙を漂う。
ただし、その2機は先程のものとは違い——
「後1歩届かなかったか。さすが武闘派(あえて過激派とは言わない)を代表するフル・フロンタル大佐と狂信者だ。まさか負けるとは思わなかった」
とアレンは褒めた。
その表情には若干の悔しさは浮かび上がっているものの声は上から目線ではあるが素直に褒めていた。
しかしネオ・ジオン将校は勝利したにも関わらず、顔色はすこぶる悪い。
これがミソロギア16もしくは14対ネオ・ジオン2もしくは3といった対決でこの結果なら拍手喝采、鬼の首を取ったように騒ぐだろう。だが、現実はフル・フロンタルとアンジェロ・ザウパーが率いる直属の2小隊と他3小隊とネオ・ジオン将校は知らないがプルシリーズ上位ナンバー3人にほぼ壊滅、フル・フロンタルの機体も頭部と右腕を失い、アンジェロ・ザウパーは撃墜こそされていないが大破判定という本当にギリギリの勝利を拾ったような形である以上、喜ぶことなどできるはずもない。
何より、今回の対戦相手が先程、つまりプル、プルツー、プル3とは明らかに違う母機、ファンネルの動きであることが見ているネオ・ジオンの将校達にもわかったのだ。
その事実はラカン・ダカランやカリウス・オットー達を破った3人以外にも少なくとも3人は化物がいるということが確定した。
まぁ、実は上位ナンバーは後94人(上位ナンバーはアレン採点の成績順トップ100名意味するが現状数字の並びこそ入れ替わるが№101(戦死したプル24を抜く)までがそのまま上位ナンバーと呼ばれている)もいるのだから本当は本気で戦えば、数を揃えられないネオ・ジオンでは逆立ちしても勝てないのが現実だ。
だからこそアレンは実質的には独立勢力でありながら公式的にはネオ・ジオンの下部組織という地位を甘んじている。
トップがハマーンであるからというのはもちろんだが、いざネオ・ジオンがアレン達に牙を剥くことがあったとしても、それが例え騙し討ちで行われようとも一蹴することがほぼできると踏んでいるからだ。
それに比べて連邦は質はともかく量が用意できるのでアレン達にとっては脅威なのである。なにせ数を用意すれば宇宙には大地がなく、360度全方位から攻撃することが可能である。
簡単に言えば人力ファンネルをやられるとさすがのプルシリーズもきついのだ。
つまり、ネオ・ジオンは多少の犠牲を覚悟すれば勝てるが連邦は犠牲を出しても負ける可能性がある。なら保険として看板だけでもネオ・ジオンを掲げていれば連邦の牽制になると踏んでいるのだ。
ちなみにあくまで連邦であってエゥーゴやティターンズではない。
どちらも連邦という枠組みでみると少数、ネオ・ジオンとそう変わらない戦力しか保有していないのだからアレン達の敵と呼べるものではない。もっともアムロ、シャア、シロッコというアレン達を除けば上位のニュータイプが揃っていて、連邦と連携することがあることもあるのでそのあたりは要警戒である。
アナハイム?政治的な話がなければ雑魚だ。