第三百四十話
プルシリーズに実戦経験を積ませたいと考えた私は、あることに気づいた。
ニューオーダーが私達を排除するために掲げる主な罪状は海賊行為、もしくはその幇助だ。
幇助そのものは知っていながら補給などをしていたので間違いではないが、海賊行為については言いがかりであるのだが(もっとやばいことはしている)どうせ罪を被せられるなら事実にしてやることにしたのだ。
母艦をデブリに偽装させて潜伏させたまま、MDのみで攻撃を仕掛ける。
ターゲットは当然エゥーゴやティターンズの巡回部隊で、得られる物は実戦経験以外殆ど無いどころか襲撃用MDの生産とその消費という浪費と言い換えることができるがその貴重な実戦経験(殺し合い)を積むことはできる。
巷では不可解な海賊達と呼ばれている存在だな。
それとこの襲撃用MDにはミソロギア初の試みがされている。
だからといって新しいシステムとか新兵器が搭載されているわけではない。その試みは……この襲撃用MD、設計から生産まで全てプルシリーズだけで仕上げた作品である。スペック的には大体ネモと同等ぐらいだな。現在の主力機であるジェガン相手にはスペックは負けていることになる。
機体性能と自分達の未熟さ(MDの習熟度に自身に向けられる殺意に慣れてない)のせいで力作がロボットアニメのやられ役みたいにボコボコ落とされる(もしくは自爆させなければならない状況に陥る)ことが悔しいらしく、プルシリーズのモチベーション向上に繋がっている。
資源の消耗は痛いが、正直辺境に行けばこれほどの鉱物資源は必要としないのでここで多少消費しても問題ないはずだ。それに辺境なら小惑星などから採掘することも可能だろう。
……いっそどこかの惑星をテラフォーミングしてみるか?火星あたりならなんとか……しかし、火星はちょっと近過ぎるか。テラフォーミングが成功したら間違いなく連邦が攻めてくるな。そうなったら一年戦争なんて目じゃない大戦争勃発だ。
………………ちょっと楽しそうだな。プルシリーズを1000万体ぐらい用意して大戦争、実際にやれば面倒事のオンパレードではあるが、ロマンはあるな。
まぁ現実的には木星あたりの衛星を調べ……ああ、そういえば木星には木星船団公社なんて面倒そうな組織があったな。
せっかく面倒を捨てようとしているのに嫌なご近所さんだ。
そういえば核融合炉のヘリウム3代替資源の模索もしないと……いや、そもそもMSやMDのような高出力が必要なものが減るのだからその心配もないか。元々安定したエネルギーとしては太陽光がある以上必要ない。
一応太陽光パネルの予備も増産しておくか。
おっと随分と話がズレたな。
「襲撃用MDからのデータ解析終わりましたー」
「どうだった」
「戦力比としては一般兵のジェガン相手に1.5倍ってところですね」
今海賊行為に出ているのは不慣れな下位ナンバー、それに併せてレナスよりも劣る襲撃用MDでその程度ということは中位ナンバーでレナスともなれば2.5倍は超えるか。まぁ相手もベテランになれば話が変わるだろうが。
しかし2.5倍だったとして空母2隻でMD800機、つまり2000機相当になる。キュベレイ・ストラティオティスシリーズが1機で20機相当だとして仮定すると150機配備しているのでちょうど5000機相当になるが……空母はもう1隻配備するか?だが、今でも戦力として1400人を配備させている。
プルシリーズは現在2500人、つまり約半数が常備兵として駆り出されていることになる。普通の国家なら戦時でも危険な域だな。しかもこの人数は艦の最低運用人数で計算されているため、戦時になれば1600人程度は見積もる必要がある。
「後300人ぐらいプルシリーズを生産するか。あまり急いだ人口増加は嬉しくないんだがな」
そういえばタキサイキア現象を利用した教育システムも検体で試した結果、特に問題なかったので導入し始めた。
その成果はなかなかのもので、辞書のような厚さのマニュアルが1時間〜3時間程度で覚えられるようになったため、実地訓練に移るまでの時間が短縮され、ニュータイプ能力も成長して一石二鳥だ。
ただ、やはりそれ相応の負担も掛かるので休憩が必要になるが、それを差し引いても十分な効果だ。
それもあってプルシリーズの増産も視野に入れている部分もある。
「食料とか大丈夫ですか?私は関わっていないので心配で……」
「大丈夫だ。大きなトラブルがなければ現状の食事を500年続けられるはずだ」
「それなら大丈夫ですね」