第三百四十六話
プルシリーズが警戒対象レベルを討ち取ったという報告が入った。
下位ナンバーが襲撃用MDでまさかの大金星。
本来なら専用機開発レベルの戦果……なんだが、臆病風に吹かされて私の特訓から逃れるための玉砕だということが判明したので期待通り褒美は特訓にしてあげる私は世界一優しいと自画自賛。
しかし、本当によく拾った大金星である。
今まで上がっている戦果はだいたいにおいて有象無象の雑魚ばかりで頭数を減らすための工作にしかなっていなかった。
ああ、ちなみに海賊行動中の襲撃用MDでアムロと交戦したことがある。
海賊行動は比較的安全であるため私自身の索敵は行わず、目的だけは示して全ての行動をプルシリーズに委ねている。
その戦闘は下位ナンバーとはいえプルシリーズとの戦いだったのでなかなかいいデータが取れた……取れたんだが……結果は3分も経たずにボロ負け、見事にMD6機が壊滅。
しかもデータを見る限り、ニューオーダーとの戦いは調整ができていなかったんだろうと結論づけた。
以前と比べると反応速度が段違いに向上している。
「あれはMDがレナスだったところでそう変わらないだろうな」
それだけの無双っぷりだった。
あれは……そう、1人だけ別ゲーの世界だったな。(戦艦に触手生やさせている人がなにか言ってますね)
逆にそうでなければ私がこれほど警戒するなんてする必要がないのだがな。
それにしてもあのIフィールドを展開するファンネルも襲撃用MDのビームライフルの出力では破るのも苦労する……厄介な代物だな。もっとも技術漏洩防止のためにミソロギアで使われている標準装備であるビームライフルよりも低出力だから仕方ないのだが。
(そういえば感想掲示板でファンネルはレーザーじゃなかったっけ?という話がありましたが作者はファンネルはビームだと思っています。なぜならレーザーがファンネルサイズで実用レベルにまで達するならMSにもIフィールドを貫通するレーザーを持たせるからです)
「おかげでアムロの異名である白い悪魔がミソロギア内でも浸透したが、上位ナンバーや中位ナンバーは対抗意識で成長を促すことができているが下位ナンバーは恐れを抱き始めているのは問題だ」
恐れを抱くこと自体は問題ではない。統計的には恐れを抱かない者は長生きできないのは立証されている。しかし、過剰の恐れは恐れを抱かない者に比べて死にやすい傾向にある。
だからこそ古代の時代から異名などというものが流行るわけだが……白い悪魔、本当にピッタリな異名である。
このνガンダムもガンダム同様白い……いや、むしろガンダムよりも他のカラーが地味になっているため余計に白い悪魔という異名にあったというべきか。まぁ狙ってのことだろうがな。
ちなみにプルシリーズの判断でアムロには定期的に襲撃を掛けているようだ。ちゃんと私が欲しいものを理解しているようで助かっている。
まぁ、資源の消耗が激しいのは難点ではあるが、それでも補って余りある資源が流れ込んできているので今のところ問題にはならない。
どこかの誰かがあちらこちらで海賊行為、そして戦闘を行う関係で航路が安全で資金洗浄や裏金作りなどブラックなことも容易にできるミソロギアの利用者が増加している。
これをマッチポンプというが私としては狙ったつもりはなかった。
そもそも交易所の容量自体にそれほど余裕がない……この特需のせいで臨時格納庫を用意するはめになった。その分資源で返ってきているし、建設はプルシリーズが担ったので問題にならなかったのは幸いだ。
「……MDの輸送方法を変えるか」
現在MDは母艦で輸送している。
しかし、無人機である以上、母艦の必要性はないだろう。
軌道計算を行った上で射出すれば……いや、軌道を逆算されて私達までたどり着かれると面倒か……なら少し効率が落ちるが母艦や空母を出して射出させるか。
そういえば面倒なことに警戒対象が増えた。
連邦軍に所属しているのでおそらく関係ないと思うが、名前はユウ・カジマ。
私もつい最近知ったのだが、このユウ・カジマという人物は強化人間人格OSの原型とも言えるEXAMシステムを使いこなしていたような記録があったのだ。
最近まで私が知ることができなかったのはその記録が抹消されたもので、得たのはジーン・コリニーが若返りと不老もどきを受けたいという要望があり、対価として連邦やエゥーゴ、ティターンズのベテランパイロットのデータを要求したところ判明した。
一応データ上ではオールドタイプとなっているが、EXAMシステムを使いこなしていたということはニュータイプの可能性もあるし、何より連邦軍であるはずなのに現在の所属が不明となっているので注意が必要だろう。