第三百六十四話
ハマーン達とシャアが戦っているのと同時にアムロやシロッコも戦っているのは当然だ。
シャアとは違い、アムロとシロッコは離されることなく10機のキュベレイ・ストラティオティスIIと戦うこととなった。
「さあ、皆!いっくよー!プルプルプルプル〜っ!」
「「「「プルプルプルプル〜っ!」」」」
プルの音頭で10機のキュベレイ・ストラティオティスIIから一斉にファンネルが解き放たれる。
その1機に20基、つまり総数は200基にもなる。
それに対して——
「フィン・ファンネルッ!……数が違いすぎるか」
「これを捌き切らないといけないとは難易度が高すぎるぞ。神よ」
Hi-νガンダムのフィン・ファンネルは6基、ジ・オIIに限っては未搭載。
νガンダムのフィン・ファンネルに比べて攻撃力の高さや本体に回収してチャージすることで再使用ができることや稼働時間が伸びたことなど全く意味を成さい数の暴力である。
ただし、シロッコのジ・オIIは一応の対策をしていた。
「焼け石に水ではあるがな!」
ジ・オIIから脚、背中からマニピュレーターが4本現れ——
「あ、撃ってくるんだ。前はビーム・サーベルだったから油断してた」
「数も増えてるし……もしかして、私達対策だったり?」
実はそのとおりであった。
シロッコはアレン達の戦力が途方も無いことを百も承知の上で、唯一活路を見出した点があった。
それは戦闘経験の少なさ、そして近接戦闘は経験の差が如実に出ると読んでいた。
その読みが正しいかどうか結果が出る時はそう遠くない。
「本当に全員がニュータイプなのか」
気配からもファンネルを使用していることからも敵が全てニュータイプであることを察してはいるアムロだったが、それを受け入れられるかどうかは話が別である。
なにせアムロはシャアやシロッコとは違い、アレン達とは初対面にして敵同士。話には聞いていたがパイロット全てがニュータイプというのは直面すると戸惑いを覚えてしまう。
「——それに気配がどれも似ていて動きが読み難い!」
ニュータイプがファンネルを回避する方法はサイコミュを通じてファンネルへと発する思念を読み取ること、それがファンネルに殺気を持たせてしまい読みやすくなる。
これがプルシリーズではなく複数のニュータイプによるファンネル操作なら200基程度で……とは言えないが幾分か楽に対処することができただろう。
「ちぃ、全滅か!」
そう時を置かずしてフィン・ファンネル6基はファンネルを10基沈めて全滅。
200基の敵の中、6基で10基を撃破したのだから十分……なのだが、対費用効果で言うとファンネルの方が優れている。
ニュータイプの数が揃えられるならフィン・ファンネルのような質ではなく、ファンネルのような量で補った方が効率的なのだ。
「それにしてもさすがアレンパパが要注意人物にあげるだけのことはあるよねー」
戦闘中だというのにその声色は軽く、プルは感心していた。
しかし、それも仕方ないものだった。
アムロは戸惑い、攻撃を躱しながらも30基ものファンネルを落としてみせたのだから。
「でもここからはプル達も参加——キャッ?!あっぶないなぁもう!」
「外したか!」
アムロが半信半疑だったとはいえ、アレン達が常軌を逸していることを知っている(氷山の一角だが)シャアとシロッコは色々と手を打っていた。
その1つが——
「ファンネルを泳がせてたなんてやり方がせこいよ!」
ということである。
ちなみにフィン・ファンネルが狙ったのはプルであり、プルの乗るキュベレイ・ストラティオティスIIはバランスコンセプトである。
フィン・ファンネルは標準のMSが持つビームライフルよりも強力でバランスコンセプトのIフィールドでは防ぐことができなかったので万が一命中した場合、最悪は死んでいただろう。
「いいもんいいもん。そっちがその気ならこっちだって手段を選ばないんだからね!」