第三百七十一話
サイコフレームか、いい素材ではあるようだがこれほど乗っ取りが容易では使い道に困るな。
ミソロギア自体とアッティスに施すのはいいだろう。私が遠出をすることはほぼなくなったし、遠出したとしてもハマーンかプルツーがいれば……いや、サイコフレームを多人数で使うことができるようならミソロギアにいるプルシリーズが総出で行えば相手が私でもなければ乗っ取られることもないだろう。(そもそもアレンが相手でなければアムロにしろシャアにしろシロッコにしろ乗っ取られることもないのだが)
だが、発光現象を起こすのが手軽というのはなかなか面白い素材だと思う。
発光現象は今わかっている段階でもミノフスキー粒子の操作によるバリア、動力化などの効果があるし、まだまだ未知の現象も秘めているだろう。
それを検証するのには現行のサイコミュよりも広く軽く単純なサイコフレームとやらの方が優れていると言える。
そもそもサイコミュで発光現象を起こせるのは私と感情が高ぶっている状態のハマーン、プル、プルツーのみである。
おそらくカミーユやジュドーあたりは恋人達や仲間達を殺してしまえば起こせると思うが……さすがに私もそこまで鬼ではない。せいぜい精巧な人形でも作って殺したように見せかける程度……戯れ程度に考えていたが、なかなかいい考えだな。後でものすごい起こられそうだが。
「それにしても連合軍は思った以上に不甲斐ない……私達が強すぎるのか?」
レナスの消費は300機に届こうというところだが、キュベレイシリーズ、つまり有人機は先程危うかったことや機体が不調を起こした1機以外は被害らしい被害はない……やはりハイコンセプト、特にハイライトコンセプトは扱いが難しいな。
ハイパワーコンセプトはまだ機動性以外は全て度外視したもので、全てを高水準にしただけだから問題が少ないがハイライトコンセプトはモータースポーツの機体と同じように軽量と高機動、つまりスポーツとして使うようなものを実戦で使っているとも言える。
故に不調が起こっても仕方ないことではあるのだが……やはりもう少し練るべきだろうな。
話が逸れたな。
対して連合軍は核によるものを除いて消費はMSだけでも1700機、核による被害を合わせると大体2000機と言ったところか。
艦も既に46隻を沈み、15隻程度を大破、他の細々としたのは数えるのが面倒だから省くとしても順調と言ってもいいだろう。
「これだけ敗戦模様で混乱こそしても逃走者が出ないのはさすがだがな」
現在のキルレシオは1:5.6、戦死者で計算すると0:約2万7千人という酷いものになるのだからこの段階で私達が全滅していたとしても敗戦としか言いようがない被害だ。
まぁ核を使われているから多少は言い訳ができるかもしれないが。
「頑張らなければ長引けば長引くほどお前達は不利になるぞ?」
戦闘の指揮を私が執らず、ジャミトフやカミーユ、プルツーに任せているのにはわけがある。
覚えているかどうかはわからないが、私の乗るアッティスにはMS生産設備がある。そして空母にもそれは備えられている。
つまり何が言いたいかと言うと——
「後5分もすれば30機生産が終えるぞ」
30機。
現在のMS総数から見ると少ないが、レナスの数だけで言うと約3%、キルレシオでみれば連合軍に対しては端数を切り捨てた状態でも150機相当だ。
ちなみにその後も戦闘が続くようなら更に10分後にはミソロギアから生産を終えた100機のレナスがこちらに飛ばされることになる。
つまり、指揮を執らないのはさすがの私でもミソロギア、アッティス、空母2隻でMSを生産しながら現場指揮を執り、更にシャア達を警戒していざという時はコントロールを奪うなど面倒なのだ。できないとは言わんが疲れる。
「しかし、本当に思った以上にレナスは戦果を上げているな」
撃墜した1700機の内250機程度はハマーン達の成果だとしても残りはレナスの戦果だ。
そもそもミソロギアの主力はやはりクィン・マンサIIとキュベレイシリーズなのだ。
実際一瞬で200機を消滅させたのが良い証拠だろう。
ならレナスの役割は、というと基本は足止めで撃墜は2の次だ。
もちろん足止めだけをさせるつもりではなかったが、期待はそれほどしていなかった。
クィン・マンサIIやキュベレイシリーズが全滅するまでの時間稼ぎもしくは引きつける囮、もしくは全滅しやすいように追い込む壁がレナスの主な役割だ。
「……これは……サイコミュリンクシステムが妙な挙動をしているな」
サイコミュリンクシステムはレナスと空母にいるプルシリーズとが繋がっているのは説明するまでもないと思う。
しかし、確認してみるとサイコミュリンクシステムはレナスとレナス間でも情報のやり取りがされているようなのだ。
本来システムなどというものはこんな大きく外れた予定されていない動きはするものではないのだが……どうもニュータイプの能力に関係した場合、システムがシステムの範疇に収まらないことを行うことがままある。
今回のこれもその1つだろう。
「なるほど、レナス同士での連携が更に向上したことによるこの戦果か……全く、ニュータイプというのは飽きない素材だ」