第三百八十二話
「では頼んだぞ。プル22」
「はい、お姉様。ご武運を」
急遽アレンの遠隔操作によって届けられた専用機にプルツーは乗り換え、そしてキュベレイ・エスティシスにプル22が乗ってそれぞれの役割を果たすべく加速する。
「指揮官が重要な役割であることは重々承知しているし、父様が私を評価してくれていることは百も承知……しかし——」
こんな晴れ舞台で指揮だけするというのは不本意とは言わないが寂しい……と呟く。
上位ナンバーは元々ニュータイプの研究のためでもあるが、兵士としての戦力も見込んでの教育が施されている。
プルツーが指揮官として教育を受けたのもミソロギアの規模が大きくなってからであり、やはり本質は兵士のそれなのだ。
「指揮官が前線戦うなど愚の骨頂なのだがな」
言われてるぞシャア。
「それにプル22にも指揮官としての経験を積ませておくことは後々に生きてくるだろう」
プルツーは兵士でもあるがミソロギアの中ではアレン、ジャミトフに次ぐ先達者でもある。(カミーユ達は同格か少しした扱いである)
妹達のこと、未来のミソロギアのこと、そして何よりアレンのことを考えて動くことも大事なのだ。
「さあ、お前の力を魅せて。キュベレイ・ハラクティラス」
ハラクティラスは特徴を意味するギリシャ語である。
ハマーン専用機であるクィン・マンサIIとこのキュベレイ・ハラクティラスはコンセプトは異なっている。
クィン・マンサIIは既存通り『MSをニュータイプ専用機にしたもの』である。それに対してキュベレイ・ハラクティラスは『ニュータイプの能力に合わせるようにMSにしたもの』である。
違いはというと——
「いくぞ!!」
プルツーの気合と共にキュベレイ・ハラクティラスから発光現象が発生する。
これだけの説明では他との違いはないように見えるだろう。
しかし、それは明確に違いがあった。
通常の発光現象はMS内の何処かから外へ向けて不規則に拡散されるような状態だ。これはクィン・マンサIIも同様だ。
だが、キュベレイ・ハラクティラスの発光現象は装甲そのもの発光していて、しかもその発光は拡散せずに装甲に留まっている。
装甲には無数の小さい溝が施され、その溝で発光現象の素であるミノフスキー粒子を動かし、効率良く機体付近に留めて発光現象を起こすのももちろんだが、パイロットから距離が空くほどコントロールが難しいことが判明しているために開発されたミノフスキーサーキット装甲と呼ばれているものである。
ただし、これには1つデメリットが存在する。
いや、発光現象そのものにも言えるのだが——
「な、なんだあの光っているMSは?!」
「新型か?!もう勘弁してくれ!」
「迎撃だ!迎撃しろ!近寄らせるな!」
「当たれ!当たれ!当たれ!」
「相手が条約守ってくれるならもう降伏したぃ」
「おい!誰か核もってこい!」
——その輝きは非常に目立ち、ストラティオティスシリーズに比べて小さいにも関わらずヘイトをよく集める。
……一部の連合兵が弱音や本音を漏れているのはツッコまない。
「そんなものは通じない!」
サイコバリアならぬサイコアーマーを構築しているキュベレイ・ハラクティラスに生半可な攻撃が通じない。
それどころか——
「返すぞ」
直撃したビームはミノフスキーサーキット取り込まれ、内部に移動され、腕部へと至り外部へ放出され、瞬く間に一帯から敵を一掃する。
つまり、ビーム兵器をキュベレイ・ハラクティラスに撃てば撃つほど吸収されて延々とエネルギーを補充させてしまい、低燃費を実現している。
もっとも、これにも弱点が存在する。
まず両腕部の2門からしか放出できないため制圧力自体は欠けていること。次にミノフスキーサーキットには容量があり、収められるビームは限られていることだ。
ただし、後者はそもそも収めず受け流せばいいだけなのだから弱点と言えるかどうかは微妙だ。
「雑魚に構っている場合ではないな」
プルツーは試運転をしつつ、アムロ達が組む、エース部隊が動き出したのを察知した。
編隊も考えず、プルツーは単独でエース部隊に向かう。
「ふむ、あちらは私達を正面突破して父様を狙うつもりか?しかし、無謀が過ぎると思うが……まぁそちらから向かってきてくれるならありがたいな」