第三百九十話
「どういうことだ。こんな数値が出るわけが……私が操作を誤っている?そんなわけがあるか!そもそもこれほどの出力ではサイコミュが保たないはず――まさか」
もしやと思いミソロギア内を計測すると予想外の結果が齎された。まさか私の意思やシステムと関係なくMSや艦艇に搭載しているサイコミュが共鳴している?!
「くっ、リンクシステムの影響か?それともこれほどサイコミュが密集しているせいか?ララァの件もあるからもしや死者の意思が関係しているのか?もしくは大勢のニュータイプの心の乱れによるものか?――何にしても制御が上手くできない」
幸い、レーザーは問題なく防げている。
コロニーレーザーとは違いソーラ・システムは光の反射を集中させるというわかりやすいシステムだ。だからこそ時間や条件が限られているが、その限られた条件さえ整えればコロニーレーザーよりも長時間照射することが可能なのだ。
「まだ発光がまだ増え続ける?!何よりこの得体の知れない感覚が収まるどころか悪化してきている!一体どういうことだ」
珍しいデータが取れることは喜ばしいが喜んでばかりはいられない。
「このまま何事もなく終われば――何!」
サイコミュの光が溢れて――――――
地球からは決して見えるはずのないミソロギアと連合軍との戦い。
しかし、サイコミュの光は地球の人々は見ることができた。
そしてその光は――ミソロギアの最後の輝きとなった。
センサー類が狂ったことでその瞬間は見ることが叶わなかった。だがミソロギアは間違いなく消失した。それは間違いがなかった。
ただし、いくらソーラ・システムによる照射であってもコロニーが跡形もなく消え去る、というのはありえず、アレンの技術力を考えれば何らかの逃れて隠れている可能性がを考慮され調査された――――が、それもすぐに打ち切ることとなった。
いや、正確には調査どころではなくなったのだ。
なぜなら急激な出生率の低下が世界規模で発生したからである。
それは地球から始まった。ミソロギアが消失してから3ヶ月経ったあたりから妊娠届出数が2割減となり、そして1年後には更に5割減り、その頃には宇宙でも妊娠届出数が減少を始めた。
これは自然の摂理で起こったものではなく、アレンが引き起こしたものだ。
辺境に引きこもるつもりだったアレンだったが、人間よりも遥かに長寿命を実現したこともあって物資不足を懸念していた。そして同時に地球という資源が枯渇することも懸念していた。
将来物資の補給に地球圏へ帰ってきた時に地球が死んでいる可能性が考えられた。その主な原因は人間にある、と結論づけたアレンは人類の大幅削減を実施する布石として数世代に渡って子宮や精巣の機能を阻害するウイルスを用意したのだ。
ただし、それを起動させるのはアレンの意思で行われる予定だったのだが、その起動にサイコミュが使われていたことでソーラ・システムを防ぐ際に発した思念波で作動してしまった結果である。
おかげで綺麗な綺麗な地球が出来上がったそうな、めでたしめでたし。
そして、肝心のアレン達はというと――
「……どうなっている。意識を失っていたわけではない……はずだが……連合軍はどこだ?そもそもここはどこだ?」
天体を見る限り明らかに先程までの座標とは異なることにアレンは首を傾げた。
「ん?……サイコミュの影響で壊れたか?」
何にしても死んでいるわけではないのだから状況把握に努めようとシステムチェックを始め……ようとしてあるシステムが異常な数字を示していることに気づく。
「0088年2月23日だと?」
そこには既に過ぎ去って久しい年月が表示されていた。