第三百九十二話
とりあえず丸2日は外部を気にせずにひたすらサイコミュを製造していた。
この世界の私が敵になる可能性があるのでサイコミュぐらいは整えておかなければならない。
とりあえず、ミソロギアのサイコミュは半数を稼働状態に、キュベレイ・ストラティオティスを30機復帰させた。
キュベレイ・ストラティオティスIIやクィン・マンサIIなど最新機種に関しては搭載されているサイコミュの質がミソロギアトップクラスであることから後回しにした。
特にプルツーのキュベレイ・ハラクティラはサイコミュは私としても質の面では特別と言えるものでその依存度から量も多く、おそらく最後になるだろう。
優先すべきは防衛戦力の数とミソロギアそのものの機能回復。
特にミソロギアは急ぐべきだろう。
この時代の私の対策としてコロニーレーザーは有効だ。
MSの最大の弱点である稼働時間。それを補うためにサブフライトシステムなどがあるが、それでも限界がある。
つまり必ず母艦が必要なわけで、それをコロニーレーザーで焼き払うことが可能……ということをこの世界の私が理解すれば迂闊なことをしないだろう。
私が私である限り無駄な資源(人を含む)を嫌う上にこちらから何か仕掛けない限りは無害……なはず。むしろMS戦を行ってはこちら側のMSに興味を惹かれて面倒なことになりかねない。私だからこそわかる。絶対面倒だ。
正直MSを1機融通して放置すればいいという考えも浮かぶが、それは未来の私の傲慢である。ここの私にとって無償でのそれは受け入れ難いだろう。
「アレン。知らせておきたいことがある」
緊急時以外は声を掛けるなと指示していたにも関わらずジャミトフから通信が入った。よほどのことなのだろう。
「この世界が過去であると仮定して連邦のデータベースに侵入を試みた」
なるほど、確かにこの時代ならジャミトフはティターンズを率いている存在で世界で1、2を争う権力の持ち主だ。情報収集には最適――
「だが、それが上手くいかなかったのだ」
「原因は?」
「どうやらこの世界は私達の世界の過去ではなく、私達の世界と似た世界のようなのだ」
「ほう?」
「試しにと側近にやらせてみると問題なくアクセスができた。そして私がアクセスできなかった理由が判明した。どうやらこの世界の私は既に死んでいるようだ」
「……なるほど、後はパプティマス・シロッコあたりかな」
「少し前までバスクが指揮を執っていたようだが今はそのようだな」
バスク?聞き覚えがないな。
「他にもデラーズ・フリートのテロ行為に関しても食い違いがある。細々としたものが色々あるようだが、何より違うのはアレン・ジールが存在しないこと、そして何よりアナベル・ガトーがここで戦死しているらしい」
「ノイエ・ジールだけでは他も相手しながらGP03デンドロビウム相手にはいくらアナベル・ガトーの腕が良くても勝てないだろうな。アクシズがケチったか?」
「その可能性はある。どうやらデラーズ・フリートの戦力そのものが私達の世界より小規模だったようだ」
「決定的な何かの違いなのか、それとも誤差の範疇なのか」
「直近の戦況に関してはセキュリティレベルが上がっており手に入らなかった。そのことから大きな戦いの前か、あるいは――」
「真っ最中、か」
小さな違いに見えるが、明らかに歴史が違うことがわかる。
となると――
「ジャミトフが言う通り、似た世界ではあるが異なる世界と考えるのが自然か」
「そうなると私は表では動きづらいな」
「双子だと通してみるか?」
「面倒なことにしかならんわ!」