第三百九十三話
<ハマーン>
「では、報告を」
「最優先であった食料プラントですが、一時的なエネルギーが停止が確認されましたが育成状況には大きな変化はありませんが、念のため要観察中です」
「MS製造ラインは現状ストラティオティスの整備用のパーツのみ増産しています」
「唯一のミソロギア内の不穏分子、イーノ・アッバーブは治療カプセルで薬を抜いています。健康状態には特に問題なく、ジュドー達も安心したようです」
「そのイーノが乗ってたガンダムタイプ……ZZガンダムのトリモチを除去し、目立った外傷もないためそのまま使用することができます。ですがコックピットの規格が連邦のものなので慣れる必要があります。ファ・ユイリィに教授依頼を出してもよろしいでしょうか?」
「許可する」
「先の戦いで得た、アムロ・レイやクワトロ・バジーナの機体パーツをアレンファーターに報告しなくていいのでしょうか?凄く喜んでくれると思うんですけど」
「何度も言っているがアレンにはサイコミュの生産に専念してもらわねばならない。喜ぶのは間違いないが今は雑念を入れたくない。もう少し待て」
「レナスが全機ロストしたせいで一部希少資源が運用次第では枯渇する恐れがあります」
「資源の枯渇か、レナスを全て失うなど予想外だから仕方ないが……アレンに報告しておく」
「スミレよりもしかすると世界渡りが再現できる可能性があるのでミソロギア用の光学迷彩を開発したいと申請がありました」
「既に気づかれているだろう今にやることではない。大人しくストラティオティスの整備をしているように言っておけ」
「コロニーレーザーの点検が終わりました。サイコミュ以外は異常は確認できませんでしたので次の指示を」
「先の戦いを経験した姉妹達の様子を随時監視。実戦を経験したならPTSDになっていてもおかしくはない。一応はアレンがチェックしたらしいが、時間が経った後に発症する可能性もある」
アレンはサイコミュの製造で忙しいから私が代理で全体の指揮を執ることになった。
本来はジャミトフもその予定だったが、ティターンズ時代から付いてきた物好きと共に情報収集に専念してもらっている。
ここが元の世界の類似世界であるならアクシズから情報を得られるだろうが、軍事力はともかく、情報量としてはアクシズよりもティターンズの方が上だろうからな。(この場合のアクシズの軍事力とはアレンを含む)
「周辺監視を行っている姉妹達から報告は」
「感知能力が高い姉妹を選出して監視に当たらせていますが現在異常はありません」
私達は正真正銘孤立無援。いや、孤立無縁と言った方が正しいか。
幸い辺境へ引き籠もるつもりでいたのだから問題ないが、予定が狂って難しいそうだ。
それに、この世界渡りと名付けられた現象を再現するための研究を始めるだろう。そうなると資源が更に必要となる可能性が高い。木星や火星、アステロイドベルトなどで採掘するのもいいが、地球や月でなければ手に入らない資源もあるかもしれないため、しばらくは地球圏に留まることになるだろう。何より労働力ではなく、金や技術で手に入るので効率が違う………のだが………むぅっ!せっかくアレンとゆっくりできると思ってたのにぃ!これじゃまたアレンは研究漬けで構ってくれないじゃない!
おっと総帥の仮面が脱げてしまった。今はアレンの代行だ。気を引き締めなければ。……でないとなぜかプル達がこちらの指示を聞いてくれないし……既に気づかれて冷たい視線が飛んできている。
ニュータイプばかりの職場は思った以上に大変なのだ。
どこかの誰かが人類はニュータイプになるべきだとか言っていた気がするが、それはニュータイプではないから思うだけで、絶対気が休まらないからならない方がいい。仮病も使えず、サボることもできず、相手に余裕があることがわかるのだからギリギリまで仕事を押し付けられたりするストレス社会になるぞ。