第三百九十四話
「アレン父さん!監視からアクシズの部隊がこっちに来てるって!」
「とうとう来たか」
サイコミュの製造に専念していた意識を浮上させる。
「人の気配は……あっちか」
宇宙というのは生物がいないから本当に探しやすいな。宣戦布告してからは大体把握していて脅威度が低く上に探りやすい宇宙はプルシリーズに任せ、私は人だけでなく動物が多くて探りにくい地球を探っていた時に比べたら本当に容易い。
「この感じは間違いなくアクシズか。それにしても私達相手に……確かムサイの後継艦であるエンドラだったか、が2隻だけというのは無警戒が過ぎる」
(正体不明のコロニーだったとしても巡洋艦2隻搭載機MS12機で対処できないことの方が少ないのだ)
「この世界の私はミソロギアを手に入れなかったのか、それとも流れが違うのだから手に入れる前か……そういえばデラーズ・フリートの星の屑作戦でアナベル・ガトーが戦死しているとなるとアクシズの軍のまとめ役がいなくなるのか……アクシズ、大丈夫か?アナベル・ガトーがいないなら重石がないぞ……それともシャアが地球圏に行かなかった?いや、確かエゥーゴにクワトロが所属しているとジャミトフから聞いたな」
ということはろくな人材がいない?これはハマーンも私も苦労しているのではないか。
パイロットそのものは姉妹達……まだ戦時中という扱いでプルシリーズと呼ばなければな……で補えたとしても指揮官は用意できない。
新米ばかりのアクシズに地球圏内で戦うことができるのか。少し気になるがあまり関わりたくないというのが正直な心情だ。取引ぐらいならいいがな。
(前の世界のネオ・ジオンの方々が聞いたなら「関係ないアクシズを配慮するならこちらでももっと配慮をして欲しかった!」と叫んだに違いない)
「このままの速度だとあちらの射程に入るのは24時間といったところか。速度が変わらない場合3時間前に準警戒体制、以後の指示はその時に出す」
「了解しました」
実働できる戦力ならばあの程度の戦力はどうとでもなる……が、一応いつでもコロニーレーザーを放つことができるように方向転換はしておくとしよう。
『所属不明のコロニーに告げる!我々はザビ家の正統なる後継者、ミネバ王女殿下率いるネオ・ジオンである!現在各サイドの解放行動中である!スペースノイドの自由のため我々に協力してもらいたい!』
いきなり部隊を派遣しておいて協力と言われても説得力が皆無だな。
ミソロギアはミノフスキー粒子を散布していないのだから通信が可能なのだから本気で協力を願うなら、話し合いをするつもりならまずは通信するのが外交というものだろう。
やはり軍部が統制できていないようだな。
ハマーンはトップに立つ才能はある。だが、組織というのは所詮、人の集まりに過ぎず、トップが優れていようがそれ以外が腐っていては意味がない。
通常なら外部から引き抜いたり人事異動などして正浄化するが、アクシズは長い間孤立した状態だったのだからそれも限りがあった。
つまり、限られた人材で作り上げた組織など、質を期待するのは難しいということだ。
この部隊の派遣そのものもハマーンの耳に入っているかどうか怪しい。
「多分入ってないでしょうね。この声、聞き覚えがあるわ。己の自己顕示欲のために戦果を求めるそれなりに使えるけど信用できない面倒なやつよ。確か中佐だったはず……それが少将って……嫌な予感しかしないわね。少将がこんな現場に出てきている点も含めて」
この世界に来て初めての来訪者は波乱を告げるものであるようだ。