第三百九十五話
出撃したMS12機と彼らが用意できる戦力全てを並べる……が――
「ガルスJにガザCか……近接戦闘主体のドライセンはともかく、ザクIIIぐらいは混ざってもおかしくないはずだが……」
ガルスJはコストパフォーマンスには優れているが、全体的なスペックではザクIIIが上回っていたし、設計が早かったためガルスJほどではないにしてもそれなりに配備されていたと聞いたが……とハマーンに視線をやると頷いて肯定する。
「ムサイみたいな旧式艦ならともかく最新鋭のはずのエンドラ級にガルスJとガザCなんて……いや、ちょっと待って。あれ、ガザCと思ったけどもしかしてガザDじゃないかしら?」
「そのようだな。しかしガザDはコンペで落ちて試験運用のための少数生産程度だったのに……もしかするとここのアクシズはそれほど余裕がないのかしら」
「その可能性が高いな」
前の世界では最も生産されたガザシリーズであるガザCは安価な砲撃支援機に過ぎなかったが、ガザDはそれを改良してMS戦を視野に入れた仕様となっていた、がガザCに比べるとコストパフォーマンスが悪くなったことでそれならガルスJでいいだろうということになってコンペに落ちたはずだ。にも関わらず動きを見れば、明らかに慣れがある。つまり、量産されたものだということだろう。
「それでアレン、どうするの」
「いきなり攻撃を仕掛けてきたわけではないがMSを出撃させる程度の外交手段を持ち合わせていない者と話し合う必要はない。プランCで出撃。指揮はハマーンに任せる」
もちろんこうなる可能性も考慮して予めプランをいくつか用意していた。
そもそも突然現れたコロニーに対して取る方策は多くない。細かい部分を端折れば3つ、敵対、取り込み、中立だが……まぁ中立はほぼなく、取り込みを図るか不安要素を潰しにかかる敵対かのどちらかだろうと考えていた……が1番確率が高いのは敵対だろうとは思っていたが。
「ハッ!各部署にプランCを伝達!」
ハマーンが指揮官モードに入ったのを確認するとアクシズの部隊に通信を送る。
「我々はミソロギア。どこにも属さない中立コロニーである。協力を願うなら無駄に武力を見せつけるような幼稚な行いは協力を求めるものではなく、敵対行動に等しい。よって我々も武力を持って排除する。降伏する者は命とアクシズへの帰還を保証するのでいつでも降伏するといい」
返答は受け付けず通信を切り、それと同時にハマーンの指示が飛ぶ。
「MS隊を発進させよ!」
そして私は敵艦に意識を向けて集中させる。
サイコミュが完全な状態ならともかく、今は70%程度でしかも何度かチェックはしているとはいえ、世界渡りを行った時から使っているサイコミュはそのままであるのも不安要素だ。未知の現象を経たのだからどのような不具合が発生するか私にもわからない。
しかしソーラ・システムを防いだようにサイコミュは防御機構として運用する関係上、不安だからと使わない訳にはいかない。だからこそ日頃より集中して視ることで不安要素を潰しておくのだ。
もっともエンドラのメガ粒子砲程度は素のミソロギアでも当たり所が相当悪くなければ問題なく耐えられるはずだが、物資を無駄に消費したくないので念には念を、だ。
「所属不明のコロニーからMSが――な、なんだ?!大きい?!しかも数が?!」
「オペレーター!ちゃんと報告しろ!」
「ハッ!30mクラスの大型MSが20機がコロニーより発進を確認!」
「……は?30m?しかも20機?何を寝ぼけたことを――」
「モニターに出します!」
ミノフスキー粒子が散布されていないため、鮮明な映像がモニターに映し出される。
そして、そこに映るのは――
「な、なんだと?!お、大型のキュ、キュベレイ?!」
「ど、どうしますか!もしかするとハマーン様直属の特殊部隊の可能性も――」
「あのようなものがあの数だけ造られたのなら前線に配備されておるはずだ!おそらく敵はこちらの同様を誘うために姿形だけ真似たのだろう。だからこそあのサイズなのだ!MS部隊に迎撃させろ!ネオ・ジオンの力を見せてやれ!」
「ハッ!MS部隊全機に通達!敵MSを迎撃せよ!繰り返す!敵MSを迎撃せよ!」