第三百九十六話
「くたばれハマーン様を汚すデカブツが!!」
ガザDが変形状態でハイパーナックルバスターを一斉に発射する。
ハイパーナックルバスターはZガンダムのハイパー・メガ・ランチャーと同等の威力を持つ故に長射程であるため先制したわけだが――
「ハ?!」
避ける動作など欠片もなく、お互いが相手を舐めきっているためミノフスキー粒子すらも散布されていない状態なので火器管制システムも十全に発揮しているため外すわけがない。
「Iフィールドだと?!馬鹿な?!」
「何が中立だ!連邦の新兵器に間違いない!」
連邦の新兵器なら姿形がキュベレイであることに、しかも1機や2機ならともかく、20機も存在することに違和感を抱くはずだが、それすら抱けないほどの衝撃的な現実であった。
これがベテランなら切り替えに時間はかからなかっただろうが、ガザDはベテランに渡されるような機体ではなく、新米かガザCから乗り続ける愛用者かのどちらかであり、残念ながらここにいるのは才能こそあるが前者だった。
才能があろうと新米ななら実戦で想定外のことが起これば動揺もするし、立ち直るまで時間が掛かる。それが実戦では命取りになるのは語るまでもない……にも関わらず彼らはその命を未だ失わずにいられるのは一重にミソロギア側のプランによるものだ。
プランCとはアクシズの実力の一端を測った上で、1人残らず捕虜にするという内容である。1人残らずというのは逃さない、ではなく、殺さないも含まれている。
「総帥も面倒な指示をなさる。捕虜などせずとも皆殺しでいいではありませんか」
「説明されただろう。完全に孤立している我々には当面協力者が必要だと。そして連邦よりもアクシズの与し易いのだから出来得る限り悪感情を最低限に抑え、捕虜を使い話し合いをするのだ」
「まどろっこしいのぉ」
今回出撃しているプルシリーズは全員が新人、しかも実戦耐えられると判断されて間もない個体であるため、緊張感が薄く、言葉も行動も軽い。
「それが総帥の指示だ。ファンネルの使用禁止も忘れるな」
ファンネルを禁止したのは姿形がキュベレイである以上、ファンネルを使うかもしれないと推測はできるかもしれないが全ての機体がファンネルを使えるとは考えないだろうとミスリードを誘うためである。
「「「了解」」」
本格的な戦闘が始まる――――が、それは一方的なものだった。
まずガザDだが、残念ながらメイン武装であるハイパーナックルバスターはキュベレイ・ストラティオティスには通じず、実弾兵器は唯一肩部にミサイルが搭載されているが対MSを想定した武装であるため、正面から受けるならキュベレイ・ストラティオティスにダメージは衝撃と多少凹ます程度しか与えることができない。
次にガルスJだが、前の世界の最新鋭機であるジェガンやザクIIIF型、ギラ・ドーガなどが相手にならないのだからそもそも相手になるわけがないのだ。
「MS部隊……壊滅しました」
「そ、そんな馬鹿な。戦闘が始まって3分も経っていないのに……」
蹂躙、もしくは虐殺(ただし殺してない)としか言い表せない結果となった。
プルシリーズが未熟であってもキュベレイ・ストラティオティスが敵の数を上回っている限り負けはないことが確定した。
「これではシミュレータよりも質が悪いな」
「でも本物の殺意と恐怖が経験できたから無駄じゃないと思いますよ」