第三百九十七話
「貴方達は包囲されています!無駄な抵抗はやめなさい!」
「面倒なので大人しく降伏して」
「もうやっちゃってもいいんじゃない?」
「滅……殺……否」
エンドラ2隻は既に主砲、対空レーザー砲全てが破壊されて無防備状態となっている。
2度ほどミソロギアに向かってエンドラ2隻によるミノフスキー粒子が散布化ではないため完全な火器管制されたメガ粒子砲の斉射が行われた……が、砲塔の狙いがどこなのかなどニュータイプ能力など使わずとも読み取れ、キュベレイ・ストラティオティスが前を塞ぎ、メガ粒子砲を全て受け止めた。
「降伏する。ただ南極条約に則った待遇を求む」
「……少々お待ち下さい」
指揮権と裁量権を握っているプルシリーズは通信を切り、アレンへと繋げた。
「総帥。敵艦2隻が降伏。しかし南極条約に則ったものを希望されているのですがどういたしましょうか」
「南極条約……私達は連邦でもジオンでもないのだからそんなもの関係ないし、そもそもネオ・ジオンに条約は当てはまらないはずだが……条約内容をジャミトフに確認させる。その間に宙に漂うパイロット達をエンドラに放り込んでおけ。ああ、もちろん資源は回収するように」
「了解しました」
降伏したのだから資源(MSや艦)は自分のものであるというのはミソロギアでは常識である。特にレナスを全て失ったことで希少金属が足りないのだからなおのことだ。
パイロットの救助に関してはアレンの記憶の中にある前の世界の南極条約の1文に戦闘が終了後には可能な限り救助を行う内容があったのを思い出し、このまま長い時を放置しては空気などは大丈夫だろうが精神に異常をきたす場合もあるだろう。そうなれば攻め口として使われる可能性が高くなると判断したからだ。
アレンはジャミトフにこの世界の南極条約がどうなっているのかを調べさせ、前の世界と差異がないことが判明したので降伏を受け入れ、南極条約に則った待遇を約束した。
ずいぶん待たされたネオ・ジオン側にとっては少しだけホッとした部分があった。
相手はハマーンの直轄部隊だとか連邦軍の特殊部隊にしても一時的にそのまま待たされたことで、ミソロギアが真剣に協議した結果だから条約は守られるだろうと思うことができたからだ。そうでなければ適当に即答して連行したあとで処分してしまえばいいだけなのだから。
「それにしても南極条約だけでなく一年戦争そのものは調べた限りでは違い、か」
ジャミトフからの続報を聞いたアレンは首を傾げた。
一年戦争を終えた時に生き残っていた、戦死している連邦、ジオン両軍の将官を照合した結果も差異はなく、今はデラーズ紛争後の連邦の戦死者とティターンズの結成当時の人員を照合している。
「一年戦争で将官の生死に差異がないとなるとその後ということだが、デラーズ紛争までの3年間に何かがあったわけか……分岐点が連邦側ならいいがジオン残党側だとすると分岐点を探すにはかなり骨が折れるな」
残党というだけあって公の場に現れることがない。表に現れればテロリストなのだから当然で、分岐点が何なのか調べるのは不可能に近い。
「ただ……アレン・ジールがいなかったのが気にかかるな」
アレン・ジールのコストパフォーマンスを考えればデラーズ・フリートにノイエ・ジールを渡すぐらいならアレン・ジールを渡す方が安上がりで効果的なのだが、それがないということに違和感を感じ――
「もしかすると私か?分岐点は」