第三百九十八話
捕らえたネオ・ジオン兵士達を取り調べを行った。
能力はあるが独断専行などという愚かな少将から得た情報では、やはりザクIIIやドライセンの情報などがないようだ。やはり私がいないのだろうか?しかしデラーズ・フリートにはドラッツェが存在しているというのは確認されているのだが……。
そんなことを考えながらガルスJとガザDを生産していく。
なぜこの程度のMSの動力源に大量のレアメタルが使われているのか……それになんだこの無駄な設計は。これでは追従性も機動性も損なっている。私特有の技術ならともかく、この時代の既存の技術のはずだが。
そうして私が再設計したガルスJやガザDは回収する前の機体と比べるとレアメタルの使用率は5割減……つまり、ミソロギア製ガルスJとガザDをネオ・ジオンに返還したところで5割は私の手元に残る算段とした。
正直全て欲しいが、手持ちの札はそれほど多くない。武力、医療、技術、この3枚を駆使して交渉を行わなければならない。
「さて、ここからが本番か」
あんな部隊など私達が負けるわけもない。むしろ問題はこれからだ。
今度はこちらから通信を入れる。できればこの世界のハマーン自身に渡りをつけたいが――
「駄目ね。なんかネオ・ジオンのセキュリティとかデータベースが全然違うのよ。ジャミトフの話だと連邦やティターンズの方はそれほど変わってなかったって話だったのに……直通回線も緊急回線も変わっているってどういうことよ」
「……やはりこの世界の私はネオ・ジオンとの関わりが薄いようだな」
「あ、だからね。アクシズの時代からセキュリティ強化してたもんね。それに直通回線も緊急回線も構築したのはアレンだったわね」
「あんなザルなシステムに頼るなどできるわけがない。あれでは戦闘などせずとも容易く制することができるぞ」
「それができるのはアレンみたいな異才ぐらいだと思うけど」
「私ぐらいの才能は世界を見れば1人や2人ぐらいいるさ」
「逆説的には2人ぐらいしかいないということじゃない。それでどうするの?今ネオ・ジオンは忙しいっぽいし」
すぐ連絡を入れないのは捕虜達からの情報収集でグリプス2においてエゥーゴとティターンズとネオ・ジオンが決戦というべき戦いを経て、エゥーゴを率いるクワトロ・バジーナが戦死、エースパイロットだったカミーユ・ビダンは重傷、ティターンズも勢力としてはまだ一部現存するようだが指導者であるパプティマス・シロッコが戦死、しかもジャミトフ、バスク、シロッコと短い間に相次いで倒れたことで旗頭が不在で、立て直しは不可能だろう。せいぜいがジオン残党のようなテロリストへと成り下がるのが関の山だ。
そして、唯一ろくに損害を出さずに済んだネオ・ジオンは現在では最大勢力である……らしい。本人達はそう思っているのは間違いない。が、嘘ではないからと言ってそれが真実かどうかはまた別問題だ。ティターンズの情報が錯綜しているあたりティターンズが負けたのはほぼ間違いない。まぁ前の世界でもティターンズは負けていたので不思議はない。
エゥーゴに関してはクワトロ、アムロ、カミーユ、ファ、ナナイ以外の人材を知らないので何とも言えないが、クワトロが戦死したならしばらくは混乱するだろう。
その点、ネオ・ジオンはハマーンは無事でミネバ・ラオ・ザビも健在なことを考えると、捕虜達が勝ったというのも間違ってはいない可能性が高い。
「……サイコミュの修繕を最優先にする。サイコミュさえ揃えばこの世界のハマーンを探し出すことができるからな」
「多分、今ならサイド3にいるんだと思うんだけどね。この局面だと支持基盤を固めるためと戦力増強も兼ねて。もう少ししたら資金面の援助を目的に月に挨拶、その後は占領している各サイドを巡って支配を強めて、そして地球へって感じだと思うんだけど……アレンがもしネオ・ジオンにいなかったら、なんて考えたことがないからどの程度の影響があるか想像できないから自信がないわ」
「……ハマーンはネオ・ジオンが地球を支配に動くと思うのか?」
「まず間違いないわね」
「なぜだ?」
「アレンがいなくてシャアもいないなら多分この世界の私って心の支柱は人じゃないと思うの。つまり――」
「権力、か」
「それと周りからの影響も大きいでしょうね。私は(何もかもぶち壊す)アレンがいたから大丈夫だったけど」
「ふむ……ネオ・ジオンが世界征服……大風呂敷を広げるにもほどがあると思うがな」